● あなたは何の目的で会社に来ていますか?
いきなり簡単なようで難しい質問ですが、「何の目的で、会社に来ていますか?」といきなり質問されても、皆さんはすぐに答えることができますか?初めてコンサルティングする会社に訪問した時にも、よくこの質問をします。参加者は講義を聞くだけだと思ったら、質問をされてしかも抽象的な質問なので、困ったように目を白黒させながら答えようとしていますが、なかなか正解は出てきません。
ある登山家がエベレストに初登頂したときに、「何故山に登るのか?」というインタビューに「そこの山があるからだ」という有名な台詞がありましたが、そこに会社があるからだというのは答えにはなりません。大抵の答えは、「お金を儲けるため」というものが一番多く出ますが、本当でしょうか?お金を儲けることは、あくまでも手段であり、目的はお金を儲けてより良い豊かな生活を過ごすためと思います。手段と目的は違うものですが、このような質問をしますと、わかっていても混同してしまう人がほとんどです。
さて、会社の目的は何でしょうか?これまた禅問答のような質問ですが、普段は仕事が忙しくて、とてもこんなことを考える暇もないかと思いますが、少し考えてみてください。色々な解釈があり、どれが正しい答えというものではありませんが、私は「会社の目的は、生き残ること」ですよと説明をします。日本における最も古いというか、寿命の長い企業は某旅館で、もう1300年という驚異的な長生き?をされています。屋久島の千年杉もビックリですね。ここまで継続されているのは、並大抵の努力ではなかったと思います。
会社には、少なくとも複数以上の人が働いていて、そこで従業員は収入を得て生活をしていくわけで、会社はその働く場所を提供して、働きの対価を給料として支払います。従業員も社長も、会社が存続することを前提に毎日働きに来ているわけで、「今日会社は潰れましたので、それでは皆さんさようなら」では非常に困ったことになります。そんなことになれば、本人も家族もその日から路頭に迷うことになってしまいます。そのためにも、会社は生き残り、存続していかなければなりません。人間にも寿命がありますが、こと会社に関しては、上手く経営をやりさえすれば寿命は人間以上に延ばすことが可能です。社長というのはそういう意味でも、大変な社会的貢献という責任のある職業ですね。
●会社は生き続けるもの
会社はまた例えるならば、生き物とも呼ばれています。毎日毎日生産活動をしているので、当たり前といえば当たり前です。生きていくためには、利益を出すことだけでよいですが、生き続けるためにはさらに、
利益を出し続ける体質に変わることが不可欠です。それは、市場環境が変化していくためです。一時利益を上げただけでは、短期的な寿命に終わります。特に米国企業では、短期利益の目的のために従業員を簡単にリストラしてしまう傾向があります。それでは再び景気がよくなった時、人を雇用する時に人は非常に不安に駆られ、心底からこの会社に尽くしてよいか疑問になります。
生き続けるには、ライバルに打ち勝つだけの競争力を、身につけることが重要です。ここ約20年の間に市場環境は、情報公開もあり世界中が激変してきましたが、恐らくこの傾向は続くと考えられます。つまり、さらに厳しい生存競争となり、ますます多品種小ロット化していき、合わせて製品の寿命も短命化していきます。このような環境下で、ライバルに勝る競争力を身につけるには、どうすればよいのでしょうか?そのヒントになるものが、多品種小ロット生産方式です。
●多品種小ロット生産方式とは?
多品種少ロット生産にするということは、①段取り替え時間を短縮する ②リードタイムを短縮する ③高い品質レベルを確保する ことであり、従来の生産システムとは全く異なるものです。
① 段取り替え時間短縮とは、時間単位から分単位に短縮し、さらにはワンタッチ段替えという
数秒間まで時間短縮に挑戦していきます。20%、30%という時間短縮ではなく、1/4、
1/10といった思い切った時間短縮を狙っていきます。それなりの手法があり、心配するこ
とはありません。少ロット生産になりますと、段取り替え回数は増加しますので、単純に増加
すれば稼働時間が少なくなりますので、回数が増加しても総段取り替え時間は減少させること
です。そして、多くの品種を生産できるようにします。
② リードタイムの短縮とは、設備故障を自主保全などで徹底的に減らしていき、結果として仕
掛りを削減することで、リードタイムを短縮していくものです。チョコ停や設備故障がしょっ
ちゅう発生していると、工程の前後にどうしてもバッファを持つようになります。これでリー
ドタイムがばらついて、しかも長くなってしまうのです。ですから自分の設備は自分で守るよ
うにし、リードタイムも日単位から時間単位に短縮していきます。また、工程間結合してU字
ライン化したりする流れ改善や、バッチ生産から1個流しに変えて、流れを速くしていきます。
③ 高い品質レベルの確保とは、つくった後で検査をして不良をはねるのではなく、1個1個各工
程内で検査するもので、オペレータ自体が検査員も兼ねて(自主検査)、それを標準作業に組
み込んでいきます。不良率は、%レベルからPPMレベルに削減していきます。オペレータの多
能工化が必要になってきますが、それには個人個人のアドリブ作業ではなく、標準作業にしな
ければなりません。標準作業においてもまだ不良が出るようだと、ポカヨケで徹底的に不良が
出ないようにしていきます。
このように今までの生産システムを変えることは大変な労力が必要ですが、会社が生き残るためには不可欠なことです。ライバルも同じことをやるかもしれませんが、いち早く先行して彼らよりもやりあげることです。