13.組立ないで組立てるとは?

今までの組立の視点を180度変えてみませんか

 

   仕事=作業ではなく、仕事=作業+改善でなければ競争に負けます。また作業=主体作業+付帯作業+ムダと書くこともできます。とりあえず付加価値を生まないムダを外しますと、主体作業とそれに付随する付帯作業になります。主体作業は、主に付加価値を生む作業になり、加工や組立がそれに相当します。

 

   例えばネジ締め作業では、ネジを取る→ネジ頭を確認し、持ち替える→ドライバーを取る→ドライバーのビットをネジ頭の凹みにセットする→母材にネジをセットする→ドライバーを回す→締め付ける→最後の1ターンで締めたことを確認する→ドライバーを離し、ネジ頭の損傷がないことを確認する→ドライバーを元に戻すという一連の作業を考えます。付加価値を生むのは、わずかネジをドライバーで最後の1ターンを回転させて締結する作業だけです。このように見ていきますと、主体作業の中でも付加価値を生んでいる作業は、ごくわずかで全体の作業の5から10%以下となってしまいます。

 

   言い換えますとネジ締めの作業は、ネジを最後の1ターンを回して締結することを指します。その他の作業は、できるだけ省いたり、少なくしたりして、価値ある作業に置き換えて、必要な作業のみを結合していけば、非常に短時間でも完成品ができ上がり、競争力を持つことができます。加工においても同様です。刃具で加工物を削っている時だけが価値があります。さらに追及していけば、その加工時間や加工方法を見直すことで時間短縮することができ、しかも狙った品質を得ることも可能になります。

 

  付帯作業は、主体作業の補助的な作業になり、検査、手直し、段取り替え、ピッキング、運搬、格納、梱包、さらに棚卸作業もこれに当たります。付帯作業をもっと細かく見ていきますと、加工する際の材料準備、生産指示書の確認、加工プログラムの準備と確認、冶工具の準備、設備や機械へ材料のセット、加工前の刃具の調整と確認、切粉除去、給油、監視、微調整などがあります。つまり組立てるとか加工するといわれている作業には、付加価値が本当に少ないことが見えてきます。

 

  それなら組立てることや加工することを別な視点から見て、本当に必要な作業は何かと根本から考え直すことで、全く違う方法で求められている機能の代替ができるヒントを発見できます。またその工程だけを担当するのではなく、前後工程さらには付帯作業も含めて取り込むことも考えてみると、視点がまったく違ってくるものです。またそのものの作業を、別な方法で代替できないかと考えてみましょう。

 

 

その方法でなくとも別な方法があるものです

 

 

   魔法や手品のように号令をかけてハンカチを持ち上げれば、パッと鳩が飛び出すような仕掛けはありませんが、バラバラな部品をパッとすぐに組立してしまうのは製造の立場であれば理想の作業になります。組立において、数年前から短納期で試作品を提供できる3Dプリンターの部品が可能になり、最近は3Dプリンターによる製法が盛んになってきました。これは“組立しないで組み立てができる”という一つの手法になります。病院で行われているMRI検査のように0.01mm単位に細切れにし、樹脂や紛体金属を成形していきながら立体を作っていく方法です。これならば数点の部品を別々に製作して、各々を組立する必要がなくなり大幅な時間短縮になります。

 

   製造以外でも組立しては?という視点に変えてみましょう。ピッキング工程で部品を集めてトレーや台車に載せるだけでなく、そこでサブ組立をしてしまうとメインの組立ラインでの作業が非常に簡単になります。さらに部品を加工した工程で、その部品にまつわる部品を組み付けしたり、さらには加工したりしてできるだけ工程結合することも可能です。次工程に作業のバトンを渡すようになれば、時間がかかる、品質は低下する、停滞が発生する、場所を取るなど部品や半完成品にとって悪いことばかり生じてきます。また協力工場でサブ組立するよりも、できるだけ付加価値を自社内に取り込みたいものです。外に出し入れの手間を考えますと、内部で完了すれば効果がさらに出ます。

 

  加工したらその場でできるだけ組立することにしていけば、リードタイムが短縮できます。加工したものは、他に加工したものと組立てなければ製品になりません。部品単品で、お客様の認める機能を発揮させることはできません。部品がいくつか集まってサブ組立になり、さらにそれらの多くが組立てられて完成品になります。加工だけでなく、さらに工程を加えることで付加価値をもっと増やせないか考えていくと新たな発想が発見できます。プラモデルの部品のように、一回の成形で色々な部品が出来上がり、それらを削除して組立ててしまう要領です。切削加工したらバリ取りが発生しますが、あとでバリ取り作業が必要となります。それも不要な加工方法や加工時にバリも除去する刃具を工夫するなど、余分な加工が不要になります。今まで難しかったことも諦めずに別な視点で何度も検討してみることです。諦めないで何とか多くの仲間の知恵を結集して突破口を見つけることが成功の鍵になります。しかもタダです! 

 

組立時間ゼロは究極のモノづくりの求められる時間です

 

  組立時間を限りなくゼロにすることは大変なことですが、その考え方を持つことで発想の転換が可能になります。何をやるにもまずはできるという意思、やるんだ!という決意がまずありきであることが大切です。偉大な発見や発明は、この意志や決意がまずあって諦めずに取り組むからこそ、見えなかったヒントや気づきがきっかけとなっています。手品のようにパンと手を叩くとバラバラだった部品がパッと完成品になると、これは工数ゼロですからリードタイムもゼロになり、大儲けになります。

 

  その発想や挑戦する気持ちを全社員が持っていれば、市場環境が大きく変化しても追従できると考えます。バカバカしい発想かも知れませんが、このような発想をすることで見えなかったモノが見えるようになるものです。いつも考えるようにしておくことです。3分は長すぎますので、毎日2分集中してメモを取っていくことで、ヒントが潜在意識から浮かんできます。この時間投資を是非して欲しいのです。加工時間ゼロも同じ考えです。加工方法の変更だけでなく、加工プログラムの変更、設計と連携して機能や公差の見直しなどから少しずつですが確実に成果ができます。ムリではなくできる!と決意することです。