8.表示標識でも現場改善の力になる

表示標識の認識が不足している

 

  工場内の5S活動をしている企業は非常に多くあり、床面も綺麗にして設備や機械、作業台、台車、棚などを整備されていても、なんとなく雰囲気が良くないことを感じる時があります。それは作業や作業準備などをしているオペレータの様子から伺えると共に、その雰囲気とほぼ正比例しているかのように表示標識の良し悪しに関係しているようです。床は綺麗であっても、ラインテープが汚れていたり、はがれていたり、場所の表示がなかったりしていることなどが見受けられるのです。一見完璧のように見えても、少し立ち止まって見渡すとすぐに感じ取ることができます。

 

 生産管理板のグラフを見ても、目標値がなかったり、毎日の記述や記入がなかったり、どこまでが正常でどこからが異常なのかわからないこともあります。さらに異常だった場合には、どのようなアクションを誰が何時やるのかも記入してないことも多く見受けられます。“パッと見て、ハッと気づき、サッと行動ができる”には、まだ現場改善の遠い道を歩む必要がありそうです。例えば、管理図において目標線だけでなく、正常域は緑色、異常(注意)域は黄色、危険(すぐにアクションを取る)域を赤色で着色しておけば、線を引いた時にすぐにわかります。あとちょっとだけ手を加えるだけのことなのです。

 

 設備や機械に取り付けられているアンドンがありますが、点灯する色の意味を訊ねると明確な答えは余り返ってきません。何人か訊ねると解釈が違っていることもあり、さらにはアンドンを活用していない工場もあります。同じ工場でも設備や機械のメーカーが違うとアンドンの位置や順番、そして点滅方法も違うことがあります。同じ工場であれば設置する前に仕様を明確にして、設置した時には工場全体で統一されるようにすると、見た目にも使う側にとっても非常にわかりやすいものになります。

 

 オペレータの標準作業票や標準作業組合せ票を余り見ることはなく、それらがあっても実際の作業と見比べるとまったく違う作業をしていることも見受けられます。作業指示や作業標準が設置してあっても、実際に手順をつき合わせてみると違うことに気づかされます。作成した日付を見ますと、かなり昔の時期に作成したものや一度作成したものがそのまま掲示されていることも多々あります。管理監督者は何を基に作業指導をしているのか疑問を持ってしまいます。もう慣れているから必要ないなどと開き直ってしまう監督者がいるのは困ったものです。それで本当に品質保証ができるのかと詰め寄ると、急にモゴモゴと口が開かなくなります。少しは反省の心を持っておられるようです。表示標識は、管理監督者や管理者の伝えたい事や意思の代弁者でもあるのです。

 

表示標識にひと工夫するだけで認識が変わる

 

 表示標識の認識を少し変えてみましょう。名前は体を表すとか、男の顔は履歴書などともいわれます。お札に福沢諭吉が印刷してありますが、これは1万円であり野口英世の千円ではないのです。それくらい表示標識は意味もあり価値も持っているのです。千円札に「0」を1つ付けて「はい、新札の1万円です」といったら警察行きになってしまいます。伝票も1枚の紙ですが、価値は何万円もすることもあり、カンバン1枚でも数百万円の価値を持っているものもあります。職場に表示標識を貼って置くことは、職場で周知徹底しなければならないことを社員に訴えているのですが、その意味や価値の説明を十分に社員にしていなかったのではと思います。

 

 社員の意識を喚起するために呼びかけや再度の説明も大事ですが、それにひと工夫して盛り込んでみましょう。その味付けを加えるだけで見る側と使う側の意識と行動が変わるものです。床のライン引きはフォークリフトなどが走っているとペンキでも長持ちはしないものですが、面倒でも定期的に塗り直したり、張替えたりしたいものです。推奨しているのは、全部線を引かないで、コーナーのL字部分や道路のようにポイントごとに表示するものです。ある程度は消耗品と点検だと思って取り組んでみてください。「割れ窓理論」というのがあり、それは建物の窓が壊れているのを放置すると、誰も注意を払っていないことを示し、やがてすべての窓が壊されるという考え方です。このように乱れたものを放置しておくと次第に周囲の作業環境まで悪影響が及ぶことになります。いつも管理監督者の皆さんは点検整備をしておきたいものです。

 

 先に述べましたグラフには、緑・黄・赤の3色を入れるだけで、一目で状況がわかります。そして管理板や掲示板には、責任者の笑顔の写真(これが肝心です!普通の顔だと人が見向きもしません)と名前、電話番号まで記入して責任感を明示します。さらに誰でもわかるように、ルールや取るべきアクションも明記しておきます。アンドンには色の意味を記入して取り付けます。標準作業票や標準作業組み合わせ票は3ヶ月で見直します。このように定期的に不具合があったらすぐに処置や対策を講じるように組織化していきます。5Sのオージットのようなものを組織として定期的にやることで維持継続が容易になります。いつもきちんとしていれば普段の作業も効率よくなるものです。努力なしでは良くならないことを再認識したいものです。近道はありません。

 

 

表示標識の違いで大きな効果が出る

 

  表示標識の解釈で大きな違いがあります。表示は3m離れた場所からでも認識できると設定します。小さな文字や汚れで判読できなければ即刻直していきます。その判断基準があるだけですぐに行動ができます。表示標識のイメージは、誰でもわかるように設定されているスーパーマーケットです。また表示標識を喚起するには色を用いることが一番です。ただし余り多く使うと混乱するので5色程度に納めます。

 

 次には、○、△、□、などの形状を用いるものです。形では、バナナ、リンゴなどの形状と色の組み合わせで確実に認識できるものがあります。カンバンを振り分けるときに、メーカー名の替わりに用いて捌くスピードを数倍にして間違いもなくした実績があります。その次が数字です。桁数は3桁までで認識しやすく覚えやすくします。最後に文字ですがこれもできるだけ少なくします。数字と文字の組み合わせは4桁までが良いでしょう。これに色や形を加えることもアイデアです。ラインテープなどを一式用意して台車も準備しましょう。これらを探すことなく、すぐに実行できるような仕組みづくりも大切です。