11.バラツキをおさえてから改善がはじまる

改善が継続する仕組みを理解しましょう

 

  改善を始めるに当たり大切なことがありますが、改善を継続して行う仕組みを理解しておられない人が余りに多いのが現状です。そのために改善活動が一過性の取り組みになってしまったり、改善が業務以外の仕事になってしまったりして、結局改善活動が継続してできない雰囲気や企業文化になっているのです。掛け声が大きい時には社員も活動しますが、その掛け声が小さくなると次第に活動も衰えてくるものです。それは何のために改善をやるべきなのかを、最初に全社員に分かるように説得していないことなどの要因が挙げられます。また闇雲に改善をしようとしても無理です。改善を進めるにはセオリーがあり、そのセオリーをキチンと理解しているかどうかも重要な要因になります。今回は、この後者の改善が継続するセオリーを紹介していきます。

 

 改善のセオリーの胆は、バラツキを抑えることです。バラツキが大きいと何を捉えてよいかが分かりませんので、改善もやりにくくなります。対象を明確にして絞り込むことです。一過性で終わることも避けたいものですので、改善が継続する仕組みも合わせて構築していくべきです。バラツキがあるとムラが発生します。ムラがあることにより必要以上のムリをすることになり、それが結局はムダになっていきます。

 

 バラツキを抑えることですが、まずは動作、そして作業、工程の順番で追っていきます。まずはよく見えることから対象としていきます。そして一番やりやすいところからです。動作分析は、繰り返し観察することで多くのバラツキを発見できます。発見する手法としては、時間観測、移動する形跡を導線にする方法、ビデオ撮影などがあります。部品や治工具の置き方や方向、作業順番化、手元化、インライン化の部品投入の最小化などで対応ができます。これを繰り返してさらに時間や動作のバラツキを少なくして安定化していきます。動作から作業そして工程まで対象範囲を広げていきます。これは非常にやりやすいものですから多くの人に参加してもらい、改善ができるという自信を身につけてもらいます。

  

 

 

まずは5Sと目で見る管理から始め、工程をつなぎます

 

 観察や改善活動の範囲を、動作や作業から工程間に広げるには、5S活動や目で見る管理に取り組んでいきます。1つの工程自体を改善しても、企業全体には大きく影響はないものですが、これを1つから2つと工場全体や仕入れ先、お客様までつないで行く出発点となっていきます。どんな大きなことでも小さな一歩を確実に踏み出すことが大切です。それがセオリーの大切さでもあります。

 

 5Sは、多くの人が整理、整頓、清掃、清潔、躾という順番で覚えていますが、実際にはこの順番はムダが多くあることをご存じないのです。整理して不要なモノをなくし、すぐに要るモノを整頓して収納してしまうと、棚面や置き場の清掃が非常にやりにくくなります。一度収納したものをどけて清掃をして、再度整頓して収納するという二度手間が発生してしまうのです。このため著者が推薦するのは、整理したらすぐに清掃して、必要なモノを取り出しやすく収納しやすくして、さらに整頓に表示・標識もセットで行う方法です。5Sの順番にしてもこのようにセオリーがありますが、知っているのと知らないのは効率に大きな違いが生じてきます。

 

 5S活動に一緒に取り組んで頂きたいのが、目で見る管理です。これは正常作業ではなく、異常作業だけを管理してすぐにアクションを取り、正常作業にすぐに戻す取り組みです。異常がすぐに見て分かるようにして、その異常に対してどのようなアクションをすればよいのかも明記しておくと、誰でも対応が的確にできるようになります。

 

 1つの工程が改善できれば、前後に1つずつ工程をつないでいきます。工程をつなぐことで、仕掛やリードタイムが削減できるようになります。ただし工程をつなぐ時には、従来あった工程間の仕掛の問題が顕在化してきます。そのために工程間の新しい約束事が必要になります。サイクルタイムが違うことが多いので、それをどうするのかとか、置き方やタイミングの取り方なども調整する必要です。

  

 

 

そして標準化し、平準化してさらにバラツキを抑えます

 

  工程間を段々つないでいくと、次第に流れ化ができてきます。今度必要になるのが、標準化です。工程の多工程持ちや多能工化が必要になりますので、誰でも同じように作業ができるように工程ごとに標準化が求められます。作業手順や作業時間さらに作業内容などを明記した標準作業組合せ票や標準作業票、作業のカンコツなどをわかりやすく表記したワンポイントレッスンの作成などの整備を行います。そして日々その標準に実際の作業があっているか、もっと良い方法はないかと比較をしていきます。比較した時のバラツキややりにくさなどを改善の対象にしていきます。

 

 標準化が進んでいくと、次は平準化の取り組みになります。生産計画自体のバラツキを抑えていくものです。週単位の生産計画をまず日単位の平均化にしてバラツキを抑えていきます。こうするだけでも5分の1のロットサイズに削減できます。さらに日単位から1日2回、4回、8回と細分化していくのが平準化です。この平準化を実現していくには、多くの品種の切り替えが発生してきますので、機種切り替えやロット切り替えの段取り時間の短縮の取り組みが必要になります。多くの企業で平準化が停滞しているのは、この段取り替えの改善が遅れているからまとめて生産したいという考えに押し切られてしまいます。これではいつまで経っても本当の改善が進みません。作業の標準化を徹底していけば、段取り替えも作業と同じく訓練そのものですから、セオリー通り進めていくと、簡単に5分の1や10分の1に削減できます。

 

 この平準化まで到達しますと、ようやく改善が継続してできる仕組みのサイクルを一周したことになります。これ以降は、再びバラツキを抑えるための取り組みのレベルを上げて、さらに工程をつなぐ→標準化をさらに進める→平準化のレベルを上げる→バラツキを抑えるとこのサイクルを何度も回していくことです。継続は力なりともいいますが、まさにそのものズバリのことなのです。愚直に何度も何度もやっていくことで、見えない大きな変化対応力が企業全体に身に付いていきます。