4.問題が認識できるから改善ができる

PDCAがPDで止まってしまうのは何故か?

 

  ほとんどの企業でQCサークル活動が展開されています。この活動でまず習うのが、魚の骨の特性要因図、さらにQCの7つ道具、そして管理のマネジメントサイクルがあります。多くの人が、この管理のマネジメントサイクルをご存知のはずです。具体的には、PDCA(Plan-Do-Check-Action:計画する、やる、確認する、改善する)です。でも実際にこのサイクルを確実に回している人はどれくらいいるのでしょうか。

 

 このマネジメント管理サイクルが確実に回っていれば、ほとんどの問題は解決しているはずです。また後戻しの作業もなくなり、職場の雰囲気も良くなり快適に仕事が出来ているはずです。あなたの職場ではいかがでしょうか。突き詰められるとちょっと一歩引きませんか?

 

 経営者やマネジャーがこのサイクルを上手く回していると思っていても、実際には回っていないことが多いようです。ある大企業で伺った話ですが、マネジャーの9割以上は、PlanとDoだけで止まってしまっていると現状を訴えられていました。では何故このサイクルがPlanとDoで止まってしまうのでしょうか?要因の一つとして、現実を良く把握していないまま計画を立ててしまうことが考えられます。

 

 つまり、机上にしがみついて計画を考えただけでは、現状と掛け離れたものになってしまいます。机上でやろうとしても予知していなかった問題が噴出してきます。慌てて現場に行って火消しを行うと、別な問題がまた噴出して現場がますます混乱してきます。その後始末に追われてしまい、次のCheck(確認する)までに到達できなくなってきます。失敗する事例もほとんどがこの現実を良く把握し認識できていなかったことによるものでしょう。ちょっと勇気を持って現場に第一歩を踏み出せないのでしょう。そのために、Plan・Do→Plan・Doのみを繰り返してしまい、結局何も出来なくて言い訳を考える羽目になってしまいます。そのちょっとした勇気は、実体験から得られた自信から来るものであり、現場に足を運び事実を自分の肌で感じ取ることです。

  

 

 

問題を見えるようにして、共通認識を向上させる

 

  現状や事実をはっきり認識できないままに突き進むのは、目を閉じて走り出すのと同じ行為で、とても無謀なものです。よく「見える化」するとありますが、現場で発生している現象が見えるようになって異常かどうかがはっきり分かるようにすることです。正常ならば特に対策を打つこともありませんが、異常であればすぐに手を打つようにして素早く正常に戻します。このフィードバックする時間が短ければ短いほど損失は少なくすることができます。

 

 PDCAを回すためには、まず問題が誰にでも明確に分かることが必要です。問題が分からないまま計画を立ててしまうと、違った方向に進みやすいものです。このPDCAの前に、問題を見えるようにするが大切です。そのヒントとして、PはPlanではなく「Problem(問題)」。DをDoではなく「Display(「見える化」する)」として考えてみましょう。問題を顕在化して見えるようにしてから問題を解決するためのPlan(計画)をつくっていきます。Problem→Display→PDCA→PDCA・・・というイメージです。

 

 そして問題が見えるようにしてくると、関係者の問題の認識レベルが俄然違ってきます。今までバラツキのあった認識レベルは、見えるようにして全員が共有化することでバラツキが少なくなり、さらに一気にレベルアップしてきます。この共通認識レベルがアップすることで多くの気付きが生まれます。そして全員がその気になって、そしてやる気につながっていき、実際に行動する原動力になります。これは、まるで凸レンズで一点に光を集中させていくようなものです。

 

 

 

トップも参加して一緒に改善に取り組む

 

 「management」の語源を調べたことがあります。最初はラテン語だと思って「man」は「手」、「agement」が「動かす」であることから、「手を動かすこと」だと思っていました。つまり、机のパソコンに向かってキー操作しているのがマネジャーの仕事だと解釈して皮肉っていました。でもこれはもしかして他の言語にないかと調べ直しました。なんと、イタリア語にありました!「manage」は、馬に乗って手綱捌きをすることであり、マネジメントの語源の良い解釈だと改めて考えるようになりました。実際に馬に乗って状況判断を随時行い、手綱を捌くのです。つまり刻一刻変わっていく現状が良く分かるから、馬に乗っているマネジャーや上司が部下に的確な指示を出せるのです。

 

 ならば改善を確実にやるにはどうすればよいでしょうか。最近試みている方法で、非常に効果のあった事例を紹介します。現状把握をして問題点をまとめる時に、全員がノートにそれらを全て書き写すものです。同じ問題の場合にはチェック印で消し込みしますが、自分が気付いていない問題は全て書いていきます。少々面倒くさいですがそれが大切な作業になります。手は第二の脳といわれています。

 

 ホワイトボードやカードに書いて貼り付けたものを見るだけで、脳にしっかり認識させることはかなり難しいものです。しかし、聞いたことや見たことをいったん脳に入力して、それを手書きして脳に再入力することで認識度が確実に高まります。それと共に観察した現状の問題点が全て把握できるので、全体像も容易にわかるようになります。また、全体像が見えてくると、問題の根っ子も見えてきますので、何を改善すれば良いのかも分かってきます。改善する時には関係者全員が共有化しているので、いざ改善に取り掛かると全ての問題と改善案が頭に入っています。そのため、チームワークが非常に良くなり、改善のスピードも加速して、素晴らしい結果を引き出してくれます。

 

 そしてもっと重要なことは、トップ自らが問題点の把握、改善案の立案、改善実施の現場に一緒に参加することです。これは非常にインパクトがあり、効果もすぐに出ます。改善がトップの感心ごとであるのは、トップがその場に参加していることで証明されます。その場に存在するだけでも非常に意味があるのです。でも、参加メンバーに余分な口出しや指示は禁物です。あくまでも主体は現場の人たちです。見守っているだけでもトップの気持ちは皆に確実に伝わります。