8.手描きのグラフで業績向上を狙う

フィードバックが遅くなるので目標未達成が多くなる

 

 

  生産現場における日々の生産目標に対して達成していますかと訊ねますと、色々と問題があって達成できない日があるということを多く聞きます。小まめに管理監督者は現場に出向いて、目標と実績がいつも一致するように管理をされていますか?色々と野暮用?があってそんな管理までは手が回らないと言い訳されるかも知れません。管理する時間がないとすぐに言い訳をする管理監督者がおられますが、ちょっとした管理で目標達成することができます。1日単位だと翌日の対応になって取り返すことが大変になりますので、できるだけ1時間ごとのフィードバックを推薦します。

 

 冗談話で以前聞いたことを紹介します。でも実際にやってみるとほぼ同じ数値になったのでびっくりしたことがあります。それは生産数を増やす方法として、まず5%増やすには監督者がラインの前に立つというものです。普段ラインにこない上司が目の前にいるのですから、オペレータは緊張しないわけには行きません。そのために5%アップになります。次は誰でも良いのですが、ストップウォッチを持ってラインの前に立つと10%もアップするというものです。人が立っているよりも、時間計測をされると嫌でも気になってしまい数値は上がります。さて奥の手の15%アップ方法は、ビデオカメラを設置することです。作業している姿が記録に残りますので、最も緊張してスピードはガンガン上がってきます。これを即効性のある秘密兵器というべきか?いや長続きしません。

 

 数量のアップだけ注力して余りにもセカセカして焦って作業すると、後で品質問題が良く発生するものです。良いものをつくるには、いつも同じリズム(タクトタイム)で確実に生産することです。その管理として、①1時間ごとの生産数を記入する、②遅れ進みを自分で確認する、③次の1時間の間に微調整をするものです。もし30分以上の遅れがあれば、みずすましやチームリーダーなどにすぐに連絡して、残業や応援などの対応を素早く取ってもらいます。毎日目標をクリアして、気分よくしたいものです。

 

   

 

手描きにこだわって生産数グラフを記入する

 

  生産数管理を最近はパソコンを使って表示している工場も見かけるようになりました。オペレータが入力する時にキーボードをタッピングする方法は、余り本人にとってはいいものでないと体験上感じています。それはキーを叩くという作業とペンを持って記入することは、結果として同じように見えますが、実は大きな違いがあると思うからです。キーイン方式は、そのまま数値をキーインすると綺麗な数値とグラフが瞬間に出てきます。しかも見栄えも綺麗です。しかし遅れていたらどれくらいで追いつけるのかなどという意識は、不思議にも余り働かないものになるのです。

 

 

 

 

 それはペンを持ち紙に書く時にどれくらいの大きさで書くのか、筆圧の強さはどれくらいで書くのか、記入する枠の中に綺麗に入れて書けるか、今回の記入は前の時よりも良くなったかなど、記入する時の意識の度合いがまったく違うからです。ペンを持って書くという行為自体が、大脳に対してかなり刺激を与えているのです。手は第二の脳ともいわれますが、キーを叩くこととペンを持って書くというのは、まったく違う働きを脳にさせているのです。例えば講演を聞いた時に、その内容を後でどれだけ覚えているかのテスト結果があるようです。メモを取らないでただ聞いているだけだと、3日後にはその内容の10%しか思い出せないそうです。しかしメモを取りながら聞くと、なんと65%も覚えているそうです。しかもそのメモを見るとほとんどのことを思い出せるのは皆さんも経験されていると思います。それほどペンで帳票に記入することは意味があったのです。これは心理学者が調べたデータのようなので信頼できる値でしょう。

 

 若かりし頃に、U字ラインの1個流しの生産ラインを初めてつくった時のことです。生産数がバッチ生産の時よりもどれくらい変化するか非常に興味があったので、その当時からこの生産数の記録を取るようにしたのです。そしてラインの入り口にこの生産高を記入する用紙を貼り付けました。そして1時間ごとに生産した数量を、手押しのカウンターでカウントした数を都度記入しました。記入するたびに目標値との比較をしながら、しかもグラフに記入するので、良かったか悪くなったかの意識がまるで違ってくるのです。そして次の1時間の生産する意識がフィードバックされて、目標を達成しようと大脳に刺激しやる気を出すようです。これは非常に効果がありました。

 

 しかも使うものは、コピーしたグラフの帳票だけです。費用はコピー代だけです。安いものです。しかも使い始めたその日から効果が出ます。これを使わない手はありません。多くの企業で採用してもらっていますが、日々の生産数管理をやることで、なんと5から15%の生産数が増えます。ただし、管理監督者がいつもオペレータや生産数に関心を示して、声掛けやニコポンなどオペレータといつもコミュニケーションを取っておく必要があります。関心を示さなくなると、1週間で元に戻ることがあります。人は正直なものです。打てば響く、打たなければ響かないものです。やはり現場にいつも出向くことです。

 

 

 

さらに生産管理板を活用して目標を達成する

 

  人は見られることでもっと良くしたくなるものです。女優さんがいつも綺麗なのは、人に見られるということをいつも意識しているからです。そのために顔だけではなく、服装や仕草までも美しく見えてしまうのです。そのヒントが分かれば、生産ラインも見られてレベルアップしようとする仕掛けをつくるべきです。何でも良いのですが、生産現場では生産管理板になるでしょう。各設備や生産ラインの近くにまず設置してみましょう。

 

 生産数だけではなく、段取り替え時間の管理も同様に横展開できます。毎日、毎回記入していきますと、トレンドも見えるようになりやる気が出て励みになります。ある機械加工工場で50台の切削を中心とした設備があり、当時の段取り替え時間は1から2時間でした。そのためにロットまとめの生産となっていて、洗浄工程が一杯になるほどの仕掛がありました。段取り替え改善を行って、すべて管理板に1回ごとの時間を記録するようにしたところ、いずれも6から15分でできるようになりました。ただしすべてやるには2年掛かりましたが、どの設備もシングル段取りにでき、さらに洗浄工程の停滞が解消したのです。見られることを上手く利用して、皆さんのやる気を引き出しましょう。