3.今日の仕事に明日の仕事を組み込む

今日は、昨日の仕事をしていませんか? 

 

 

 

  「今日は、当然今日の仕事をしているよ」と反論があるかもしれませんが、良く考えてみてくださいね。今日は今日の仕事には違いありませんが、中味の問題です。本当に今日の仕事でしょうか?実は、昨日や一昨日の後始末や尻拭いを、してやしませんかということです。きちんと部下に指示や指導をしていなかったり、しっかり準備をしていなくて手直しややり直しや失敗を繰り返していたり、期限を過ぎていたのをお客様から指摘を受けて言い訳やお詫びをしていたりしていませんか。心当たりがあるでしょうね?これらは後ろ向きの「昨日の仕事」だったのですね。進歩のないやらされ仕事の状態でも、それが毎日毎日続くとそれが当たり前になってしまい、昨日の仕事であっても、今日やるべき仕事だと勘違いしてしまうものだったのです。

 

 このように今日やるべき仕事のなかに、切羽詰って後ろ向きの仕事を優先しなければならなくなったのでしょうか?それは、余裕がなかったとか、きちんと今日の仕事の計画を立てていなかったとか、事前準備を怠っていたなどが理由です。日常の仕事に追い掛けまわされて、ついつい後追いになってしまったのでしょう。分かっちゃいるけど辞められないとは、無責任男の台詞ですが、本当に当たっています。

 

 

 

今日の仕事と明日の仕事

 

 昨日の仕事、さらに今日の仕事と明日の仕事を比較して見ましょう。

 

仕事=仕事-(ムダ+後始末など)    ・・・昨日の仕事

仕事=仕事             ・・・今日の仕事

仕事=仕事+改善          ・・・明日の仕事

 

 このように今日の仕事は、仕事だけですので現状維持のままということですが、今日の仕事に改善を含めたものを明日の仕事と考えます。それでは今日の仕事とは、どういうことでしょうか。それは、能力増強、コストダウン、品質維持、日常のルーチンワークなどです。もう少し突っ込んで考えてみますと、現行のやり方、原則、システムそのまま継続している活動ともいえます。

 

 しかし、現在の市場の環境変化を見てみますと、非常に早く変化しています。そのような条件下において、果たして今日の仕事をしていても会社は、存続できるかといえば、当然できるものではありません。一般的には、大量生産方式、PUSH方式というシステムを基に生産活動をしていることです。

 

 

 明日の仕事とは、やり方を変えるとか、原則を変えるとか、生産システムを変えるということです。この生産システムとは、多品種小ロット生産方式です。しかし、今日の仕事のやり方から明日の仕事のやり方に変えていくことは、先ほど紹介したように大変な労力と努力さらには、時間も掛かります。これは個人レベルでは難しく、会社のトップダウンが必要になります。

 

 特に設備を多く抱えている皆さんの会社では、多品種小ロット生産になりますと、段取り替えの頻度が飛躍的に増えますので、現状の段替え時間の大幅な短縮が求められます。先般ある会社を訪問した時に、数十cm角の小さな金型交換の段替えに遭遇しましたが、シングル段替えの時代にその段替え時間が、なんと90分と聞いて腰が抜けそうになりましたが、会社のトップはその時間をご存じないのか、関心がないのか不思議に思いました。ガンと一緒で気づいたときには手遅れ状態ですが、そうならないうちに自己点検をしないと、いつの間にか裸の王様になってしまいますよ。

   

 

 

今日の仕事に明日の仕事を組み込む

 

 

  現状から抜け出す競争力をつけることが目的ですが、それには今日の仕事に明日の仕事を組み込む必要があります。言えば簡単なことですが、実際にやるとなると大変なことです。発想を変えて、明日の仕事も今日のうちにやってしまおうということです。そんな無茶なことはできないと言って、常套手段の先送りして、明日に仕事を延ばしてしまえば、これがまた繰り返されてしまい、結局はいつもできなくなってしまうものです。耳が痛いですねえ。

 

 この悪魔のサイクルから脱出する見方があります。それは、今日の仕事をやりながら、明日の仕事をしていくというイメージは、現在の家に住みながら、増改築していくようなものですが、これなら皆さんも経験されたものと思います。家の一部を新しくしていくようなもので、全て一気に新しいものにするということではありません。慣れていけば、その新しい割合を少しずつ増やしていけばよいのです。つまり、現状の生産をしながら、もっと儲かるやり方に変えていくというものです。

 

 現状のシステムで売上を伸ばすことで、利益はソコソコ出せますが、段々と利益率は下がっていくものです。戦後の日本の製造業における好景気時の利益率は、10%前後もありましたが、現在は平均で2から3%と低下しています。これは、失礼な見方かもしれませんが、戦略が良くなかったと考えられます。明日の仕事をしっかりとやって、改革をしている会社の利益率は、5%前後ですが、長期間じっくりと新しいシステムへの取り組み(戦いといった方が良いかもしれません)があったからこそと思います。

 

 明日の仕事には、先を見るとか戦略が入っていて、例えば世界トップクラスになりたいので、何をやるべきかが明確になっています。変化を恐れずに、組織が一体となり、一気にやりあげる組織力を持つことですが、まず自分たちの力量を確認しながら、その範囲でできることからはじめて行き、結果を出していき自信をつけていきます。

 

 個人レベルのトレーニング方法として、著者が進めている方法を紹介します。必要なものは、メモ用紙です。今日の仕事の終わりに、机に向かい今日の業務の反省をしながら、明日の日程表を立てるものです。明日やるべき項目のリストアップをしてから、優先順位をつけて並べ替えます。この行為は、必ず手書きにします。これは脳を一番刺激する方法であり、夜の間に大脳に仕事の整理をさせることで、翌朝すぐに垂直立上ができます。順番を決めることで、2から4割スピードアップでき、時間の余裕を生み出すことができます。それを明日の仕事につなげて行きます。1から2ヶ月も経ちますと、要領が分かってきて、効果も出始めます。小さなことを確実にこなすことで、大きな仕事もできるようになります。