11.改善の抵抗勢力は中間管理職

中間管理職が一番改善をしたくない階層のようだ

 

 

 

  会社の組織構造を描くと一般的にピラミッド型になります。その三角形の上にはトップがあり、その下にはマネジャーがいて、その下が一般社員となります。この真ん中のマネジャーは中間管理職とも呼ばれる階層です。最近では口コミ効果の影響が大きくあるようで、コンサルティングを依頼されるのは直接トップからの依頼が多くなっています。従来はマネジャーの皆さんがセミナーや工場見学や視察をしてコンサルタントを知り、会社に持ち帰ってトップを何とか口説いていることがほとんどでした。この時にはコンサルタントを呼んで改善をしようとした張本人のマネジャーは熱心でした。

 

 しかしトップ自らがコンサルタントを呼ぶようになってからなのか、最も反対をして抵抗勢力になっているのがこの中間管理職になってきたことを感じます。特にこの数年間はリーマン・ショックなどもあり、世界中の製造業の市場変化におけるスピードが一層速くなってきてからこのことをますます感じます。上下に挟まって身動きが取りにくくなったのか、時代の変化に付いていく気がそがれたのか、残念な気持ちです。

 

 トップとしては自分の会社は自分の財産でもあるわけで、これらを守りそして生き残ることを使命として捉えられておられますので、それこそ本気になって改善に取り組まれます。さらにコンサルタントを呼んででも、会社や工場を何とか改善しようと想う気持ちも人一倍持っておられます。また一般社員は実際に製造現場でモノを取り扱っているので、市場の変化の状況を肌で感じて積極的に生産活動に取り組んでおられます。実際に製品を作らないことには飯を食べることができないので、仕方なく生産に従事されているかもしれませんが、、、。この階層でも多少の反対派もおられますが、抵抗勢力としては小さいものです。実際にコンサルティングに入ると、トップや一般社員はやる気を本当に持っておられることを感じます。

 

 しかしマネジャー自体が抵抗勢力となると、その職場全体に影響してしまうので、組織的にも大きな問題になってきます。特に部下がやる気を出しても、そのやる気を削ぐような言動を発すると部下は何もできなくなります。さらに上司への信頼を喪失してしまうので、期待した成果を出せなくなってしまいます。部下が家に帰ってからも、家族とのコミュニケーションも気まずくなっています。それほど上司の影響が大きいことを、トップと中間管理職の皆さんには再認識してもらいたいのです。

 

 

 

マネジャーは改善のエンジンだ

 

 

 なぜこの階層の人たちは改善に反対するのでしょうか?それは今までやってきた仕事を変えたくない気持ちがまだ強く残っているからではないでしょうか。また本来のマネジャーとしての業務を忘れてしまい、目の前の業務に没頭して何も考えていないこともありそうです。さらには定年まではあと少しだしこのままやって定年を迎えておさらばしたい、今さら新しいことをやるのは面倒だ、上からも下からも突き上げられホトホト参っている、などと色々な見えない本音がありそうです。言い訳が上手いのもこの階層ですから、トップの説得もやっかいなことでしょう。コンサルティングで訪問していても、表面上は大賛成のような態度を取っていても、著者が帰ると手のひらを返したように元に戻してしまうことも何度も経験してきました。

 

 

 マネジャーは、上と下をつなぐ関節のようなものであり、組織全体として活動していく要になっているはずです。部下を抱えて仕事しているわけですが、実は部下の下には見えない家族がいることを忘れているかもしれません。また自分の出世のことだけを考えているかもしれません。見えている部下だけのことしか見えない上司はマネジャーとして失格だと考えます。他の人よりも仕事が上手くできたからマネジャーになったのではありません。もっと大切な人のことを考えて、職場や組織の人間関係をよくしていくのがマネジャーとしての本来の仕事だと考えます。組織で仕事をしていることを忘れてはなりません。そのことを頭ではなく、腹の底から納得することが大切です。

 

 このように反対していた人たちの考え方を変えて、行動を変えることは難しいですが可能です。実は反対派の9割は、何度かワークショップを体験していくとある時に気づきます。気づけば改善活動に賛成して、推進者にもなっていきます。彼らは何かこだわりを持っているので、それらを納得できるようにしてあげることがきっかけを提供することです。やはり十分なコミュニケーションの場を持つことですね。そして本気になって取り組めば、改善をして社員を引っ張る力を持っている階層でもあるのです。この人たちが本気になって改善に取り組めるように説得する必要があります。まずは本音を聴き出して、必要によりガス抜きをしたりして彼らを認めることです。そして適正な評価をして褒めてあげ、少しずつ彼らの心を開かせて、自ら気づかせるようにします。この階層の協力があれば、改善を継続する強力なエンジンに変身されます。

   

 

 

改善推進者になってもらう

 

 

 

  この中間管理職の人たちに賛成派になってもらうには、前述の内容に加えて①マネジャー本来の業務を再確認してもらうために業務の5Sを実施する。また②マネジメントができる環境を整備して、組織として部下と一緒に取り組めるようにするなどがあります。つまり改善を推進していくには、まず現状、あるべき姿や将来のビジョン、さらに問題や課題が見えることが前提になります。それには「見える化」がヒントになります。一度仕事の棚卸を徹底的にやることが、見直しのよいスタートになります。

 

 具体的には、生産管理板、改善管理板などの目で見る管理のツールを活用しますが、重要なのはできるだけ毎日手描きで記入することです。曖昧だった業務、作業分担、目標、日々の状況などが次第に見えるようになります。朝礼やシフト交代時にはマネジャーが自らこの管理板を使って、想い、考え方などを毎日語りかけていきます。次第に結果がでるように毎日現場に入ってフォローしていくことで、部下も上司のやる気が感じられ、一緒に行動するようになっていきます。そうしていくと部下にその業務(責任も権限も)を任せられるようになり、負担も減って次第に改善ができるようになります。マネジャーが行動できるように、当然トップも現場に出て熱意を示す必要があります。