2.改善は一人でなくチームで!

オペレータの正味作業時間は?

 

 

 

  直接作業をしているオペレータの皆さんの仕事をしている時間は、一体どれくらいなものでしょうか?普通の勤務時間は8時間ですから、“トイレや朝礼などの15%のロスを考えると、7時間くらいなものでしょう”と思われるかもしれませんが、そうは問屋が卸してくれません。仕事の定義によって、この仕事の時間は勿論変わってきます。例として、付加価値の生む作業(正味作業)と付加価値の生まない作業(付帯作業、ムダなど)というモノサシで分けてみますと、実態は約半分になってしまいます。

 

 ざっくりとオペレータの業務分析をしてみますと、正味時間が50%、部品集めと選択・運搬で25%、手待ちロスや管理ロスなどを含めたトラブルシューティングで25%という数値が産出できます。なんだ半分しか仕事をしていないのか!?と思われるかもしれませんが、これはオペレータのせいではなく、上司のマネジメントの問題なのです。機械加工の現場は、組立作業の現場に比較して、標準作業の考えが行き届いていないことが多くあります。組立現場では、比較的人の移動する導線が少なく、繰り返し作業も多いこともあり、管理しやすい点があります。機械加工の現場では、人の移動する導線が長く、一人作業も多く、繰り返し作業も少ないなどがあげられます。だからといって、管理できないという理由にはなりません。

 

 オペレータの多くは、通常の作業に加えて、部品のピッキングや中間品の運搬、さらにはトラブルシューティングや段取り替え、ミーティング、電話連絡なども自ら行っています。このため作業が中断したり、ミスを犯したりするため、ますます時間がなくなり、焦ってしまうという悪魔のサイクルが回っています。しかもトラブルが発生しても、上司は見て見ぬ振りがほとんどでないでしょうか。それは、現場に標準類がほとんど掲示されていることが少ないことから類推できます。加工図面、生産指示書やオーダー用紙の類はありますが、標準作業票、標準作業組合せ票、段取り替え手順書の類は余り見ることはありません。これからいえることは、オペレータの標準作業ができていないと考えられます。業務の半分が正味作業であり、それ以外に付加価値を生まない作業があることが問題です。この状態ではいつまで経っても、現場の改善は進みません。

 

 

 

チームで、役割分担の変更を行う

 

 

 ではどうすればよいのでしょうか。考え方として、オペレータに標準作業をやってもらうように、仕事の役割分担を変更することです。トラブルシューティングは、「チームリーダー」に任せます。さらに、部品集めや選択に関しては、「水すまし」という業務に任せます。それでは、この二人はどこから呼んで来るのかということですが、これはその職場から選出をします。

 

 ここで、チーム制の考えを紹介します。このチームは、一つの構成が10人から15人で構成されるオペレータのなかから選出するものです。一番良くその職場を知っていて、さらに良くチームをまとめ、トラブルシューティングのできる人をチームリーダーとします。この存在が重要であり、これでチームの存在が定義されます。つまり、現場の組織化であり、現場は組織されていなければ力を発揮できません。その人はベテランというのではなく、やる気のある人で、他人のことが考えられる人が相応しく、自分だけという人は向いていません。

 

 

 

 そしてチームリーダーは、標準作業を作成し、維持改善のできる人であり、それができる人を任命します。すぐにそんなスーパーマンはいないからできないという言い訳は、やめましょう。まず、そういう人をこれから育てていくのです。気付かなかった良い人材が、埋もれていたかも知れませんよ。

 

 このオペレータとチームリーダーとの関係が、従来は曖昧であり管理が上手く行かなかったので、全体の生産性が向上しなかったと考えます。従来は、これらのトラブルが放置されていたことが多くあり、同じトラブルを再発させて慢性化していたのです。この関係を明確にしていけば、チームとしての生産性は3割以上の向上が可能になります。チームリーダーが動きやすくするため、異常がすぐにわかるように現場を整備しなければなりません。

 

 次に、水すまし作業は、二番目にその職場を知っている人を選出します。水すまし作業は、単なる物流マンではありません。あくまでもオペレータの標準作業ができるようにサポートをする人であり、オペレータの作業から溢れた作業を取り出したり、配分し直したりも行います。また、オペレータがベストポイントで部品が取れるようにセッティングしたり、完成品や空箱の回収なども行います。水すましと物流マンの役割は違っており、物流マンとは、中央倉庫からラインサイドの部品置き場に運搬する人であり、生産ラインには直接関係していません。

 

 このチームリーダーと水すましの二人に、従来オペレータ全員がやっていた作業から、トラブルシューティングや部品集めや選択の作業を移行して、この二人の時間の原資を創出していきます。そうすることによって、オペレータは正味作業に専念できるようになります。

   

 

 

仕事は集中して、一気に遣り上げる

 

 

 何故、こういうような役割分担の変更が良いのでしょうか?逆に今までのやり方の問題は何処にあったのでしょうか?それは、人に色々な業務を押し付けると、必要な業務に集中できないからです。これを打開するために、一つの業務に人を集中させて、一気に遣り上げてしまおうという考え方です。

 

 この考え方は、この現場における問題ではなくて、会社全体に共通したものです。開発プロジェクトから、現場の改善一つにしても然りなのです。今までやろうとしていても、なかなか実践できなかった要因は、それぞれの人に集中して仕事をさせる環境を作ってあげなかったことにあると考えます。どの部門でもすぐに異常が分かり、問題点が明確になれば、アクションも素早く対応ができるようになります。

 

 そのためにも、何処でも部門でも目で看る管理が重要になってきます。特に、間接部門は属人的な仕事になりやすいので、余計にその配慮が必要です。製造現場よりも改善が遅れているので、結局は製造現場に後始末が回ってきて、慌てる仕事になっていますね。下流だけでなく、上流も一緒にチームとして、改善を進めていきましょう。