ヒューマンエラー防止策 2020年 8月号のキーワードです。

第8回 思い込み・先入観の防止法

備忘録と忘備録はどちらが正しいかわかりますか

 

 「登山」という言葉は、山に登ることです。「入金」は、金が入る、「出金」は、金が出ると書きます。つまり、「備忘録」の「備忘」は、“忘れることに備えるための記録”がその意味になります。「忘備録」は、“備えることを忘れるための記録”になります。はやり、何か日本語として変です。「読書」は、書いたものを読むです。「書読」は、読むことを書くとなると魔法のようにつじつまが合わなくなります。漢字には、このような原則があったのです。

 

思い込みや先入観は、行動を起こす前から間違っています

 

 厄介なことも原理原則を知ることで、一気に目覚めることもあります。事例として、禁煙マークがあります。図1を見てください。AとBどっちが正しいと思いますか。国内外でこの事例出しましたが、Aは2割、Bが8割で圧倒的に間違っている認識だったのです。Bが正しいのは、単に右手で描きやすい、見た目にこの方が正しいなどと怪しげな回答です。正解は、Aです。でも答えた人になぜかと尋ねてみても、まともな答えは返ってきません。

 正解率は、1%以下です。理由は、NO SmokingのNのスラッシュが、Oの字にスライドして、1つの象形文字になったのです。これは、ユニバーサルデザインです。この理屈を紹介したら、もう間違えません。実は、工場の中のヒューマンエラーの8割くらいは、原理原則を知らない、忘れたというのが原因なのです。

 

作業する時に同時確認すると、間違えにくくなります

 

 写真1は、工程で使用される治具が設置されている管理板です。一つの治具に簡単なトリセツが、セット化されて磁石で取り付けてあります。以前は治具だけでしたが、作業ミスが時々発生していたので、治具とトリセツとセットで現場に持っていき、迷ったらトリセツを見て作業することにしました。これが意外にも効果てき面でした。

 

図1. 禁煙マークはAとBはどちらが正しいですか?その理由を答えられますか?

写真1.治具を持ち出す時には、トリセツも一緒に持ち出します