完全版・今すぐ実践!ヒューマンエラー防止策(第1回)

テーマ:ヒューマンエラーと上手に付き合おう

株式会社 SMC  松田 龍太郎

●人間に付き物のヒューマンエラー、ならばどうする?

 あらまあ!また忘れてしまったとか、ええっ!!またまた失敗したなど、日常生活でも仕事においても、失敗の連続の日々と仲良く?誰でもがお付き合いしているのが、ヒューマンエラーです。茶碗に箸、ご飯に味噌汁、パンにバター、ナイフにフォークというようにいつもセット化になっているものと同様に私たちにご縁があります。

 ヒューマンエラーによる現象として、①スリップ:やろうとしたことが十分な注意を払っていなく実行段階での失敗があります。これはやってしまった時にすぐ気づくものです。「、」と「。」の入力間違い、取り違える、忙しくて混乱して間違うなどがあります。

 もう1つの②ミス:やろうとしたこと自体が間違っているものです。やろうとしている前段階での失敗です。これはやってしまった後に気づくものです。これは、気づきにくく、情報不足、予測や期待が勘違いを生んだり、自分だけでなく集団でもやってしまうこともあります。言い出せないままことが、大きくなってしまうこともあります。その背景として、聞き間違い、錯覚、早合点、思い込みなどがあります。事前準備での相互理解が大切です。なぜやるのか、背景や目的を共有化しておきましょう。

 さらに③失念、物忘れがあります。年を取ると謙虚に実感します。自覚症状のない人や頭のいい人ほどうぬぼれてしまい、メモすら取りません。記憶は曖昧です。記憶力より、記録力を身に付けいつもメモすることでかなり対応できます。ボールペンとメモは、体の一部としていつも携帯しましょう。

 ヒューマンエラーの発生は何かを、生産現場で多くの人にインタビューをしてきました。実は、複雑で高尚なミスではなく、初歩的なミスともいわれる、たわいものないこと、些細なことでした。故意や意図的というのは、ごくわずかでした。故意がさらにエスカレートすると犯罪になります。故意の要因は、上司への恨みの仕返しなどがあります。この対策は、職場内の雰囲気づくりから始めることです。上司から部下に笑顔で名前を呼んで挨拶をする、褒める、動機付けをするなどがあります。これはまた別の機会に紹介したいと思います。

 これからの連載では、私たちが切っても切れないご縁のあるヒューマンエラーをできるだけなくし、それに伴う事故や災害のない生活を夢に見て一緒に考えていきたいと思います。著者の経験もご紹介しますが、読者の皆さんの良い体験や知恵も募集して、妙案を広くご紹介できる場にもしてみたいと思います。

 

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完全版・今すぐ実践!ヒューマンエラー防止策(第2回)

テーマ:ヒューマンエラー防止策を員数ポカヨケでやってみましょう

株式会社 SMC  松田 龍太郎

日本で初めてのポケヨケは、員数ポカヨケでした

 ヒューマンエラーの防止策は、別名では「ポカヨケ」と言います。欧米では、Fool Proof(フールプルーフ)と呼ばれていたので、日本では直訳して「バカヨケ」と呼んでいたそうです。ある工場で簡単な組立作業をしている工程で、時々ミスが発生していました。その作業は、6個の穴の空いた筐体に1本ずつバネを入れる作業でした。しかし、その女性オペレータは時々バネを入れ忘れるミスなどを発生することがありました。そこに日本のIEerの巨匠である新郷重夫先生が視察に訪れて、その作業のミスを防ぐ方法を考えられて、実践してもらったそうです。

 その内容は、板に6本のピンを立てて、1つのピンに1本ずつバネを入れた治具を作り、筐体とセットでそのオペレータに渡すようにしたのです。治具には6本のバネが見えます。そして、6本のバネを筐体の穴に入れると、治具にセットしたバネをすべて入れたことも見えます。作業完了した治具は前工程に返し、組み合わせた筐体は後工程に流します。この対策のお蔭で、バネなしの作業ミスがなくなったそうです。

 そこで先生は、「これで、どんなバカでもミスはしなくなるでしょう。これを『バカヨケ』と言うようにしましょう。」とにこやかにそのオペレータに話しかけたそうです。そのオペレータは、「私はそんなにバカですか?」と泣き出されたそうです。先生は慌てて、「私もポカミスをします。バカではなくて、『ポカミス』を『ヨケル』から『ポカヨケ』というようにしましょう。」と慰められ、納得をしてもらったそうです。先生もヒア汗をかかれたことと思いますが、これが日本で最初のポカヨケだと言われています。これは1961年の頃だと、先生のご子息の新郷希一先生から伺ったと記憶しています。

 ここではヒューマンエラーの防止策を、「ポカヨケ」とも称しましょう。6本のバネを6個の穴に入れることで、作業完了となります。ピッキングした方もきちんと6本がピンの数だけセットしたことが一目瞭然でわかります。組立時もピンのバネがなくなり、筐体に組み込まれたこともすぐわかります。このやり方は、員数を合わせるもので、「員数ポカヨケ」と言います。ピッキング側も組立側も両方が員数を確認することができ、ダブルチェックになり、ミスも1人でピッキングして組立てるよりも、ミスの確立が随分減らすことができます。

 

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完全版・今すぐ実践!ヒューマンエラー防止策(第3回)

テーマ:お金のかからない指差し呼称と同時チェック方法

株式会社 SMC  松田 龍太郎

ハインリッヒの法則を逆手に取って考えて見ましょう

 ヒューマンエラーは、些細なことの積み重ねの上に発生することがほとんどです。それが些細なことなので、普段はその原因も気づかないことが多くあります。また実際には事故にはならなかったヒヤリハットがあります。これは、実際に事故や災害にならなかったりすると、“喉元過ぎれば熱さ忘れる”の諺の如く、いつの間にか「記憶にございません!」となってしまいます。その繰り返しがいつの間にか積もり積もったある時点で、運悪く事故や災害に遭遇してしまうのです。

 この積もり積もったピラミッドの様相が、ハインリッヒの法則です。1929年に米国の保険会社のハインリッヒ氏が発見した法則です。大きな事故が1件あると、その背景には中くらいの事故が29件、さらに小さな事故が300件もあることを突き止めたのです。これは自動車事故だけでなく、労働災害にも同様に適用される比率です。人間がやることの法則化できることがわかれば、逆に利用すればよいと考えます。

 この1:29:300の比率のピラミッドの下を考えて見ます。実際に小さな事故が発生する前に、事故にならなくてよかったというヒヤリハットがあります。さらにタイミングがずれてヒヤリハットにはならずに無事に助かったとか、寸前に止めて何事もなかった、ちょっとしたことで免れたことなどと、事故の手前の些細な現象は思いのほかたくさんあるはずです。しかし記憶に残らないのは些細なことや気にも留めることのないことは、小さな事故300件の数倍以上もあると考えられます。筆者は、その領域を「モヤモヤゾーン」と呼んでいます。

 ハインリッヒの法則のピラミッドは、底辺が大きいと頂点の高さが高くなります。富士山が高いのは、すそ野が広いと称されるのと同じです。逆にこの底辺が狭ければ、頂点の高さも低くなると考えます。この「モヤモヤゾーン」の現象である、混乱していた、似たようなものがあった、量がたくさんあった、汚れていたのでわからなかった、暗いので見えなかったなどなどです。もうお分かりかと思いますが、5Sと目で見る管理でできる小改善で、廃除できることばかりなのです。しかもそれらは、お金もかからずにすぐにできることだったのです。目の前の空気は見えないのと同じことで、気づくと何でもないことだったのです。でも気づくと次々と発見できます。

 この「モヤモヤゾーン」を改善して、分母を小さくしてしまえという作戦です。そうすれば、小さな事故の300件を1/10にすれば、29件だった分子は、0か1になります。そうすれば、頂点にあった分子の「1」は、ゼロになります。

 

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完全版・今すぐ実践!ヒューマンエラー防止策(第4回)

テーマ:人は見ているようで実は見ていないからミスをするのです

株式会社 SMC  松田 龍太郎

日常いつも見ているものほど、実は見ていないのです

  嘘でしょ!と言われるかもしれませんが、面白いほどよくわかる事例ですので、セミナーの時に使う松田マジック?を2つ紹介します。1つは、「さあ皆さん、おはようございます。良くいらっしゃいました。このセミナー会場を見渡してもらいます。『黒い』ものがたくさんありますが、椅子、ハンガーなど10個以上数えてください。ようーい、はじめ!」と掛け声をかけます。15秒で十分です。「さて、数えましたね?」と参加者の顔をうかがい確認します。「さて、目を閉じてください。これからクイズを出します。先ほどは、『黒い』ものを探してもらいました。クイズは、丸いもの(四角でも、赤でも何でも構いませんが、予め数えておいてください)もありましたね。さあ、思い出してください。5つ思い出した方は手を挙げてください♪」と投げかけます。

 皆さん困った顔をして、頭を抱えます。10秒くらい待っても誰も手を挙げる人はいません。「皆さん、見たはずですね!誰も手が挙がりませんねえ。それでは、目を開けてください!」と手を大きく叩きます。参加者全員が、目を大きく開けて丸いものを探します。誰でもよいので、キョロキョロした人を指名して、「目を開けて何を探しましたか?もしかして丸いものですか?」。指名された人は、バツが悪そうに「そうです」とボソボソと答えます。部屋を見渡した時に色々と見たのですが、『黒い』ものだけを集中して探したから、他のものは一切記憶から除外したのです。パッと目を開けた瞬間に「丸いものはどこだ?」と探したのです。意識するとは、こんな簡単なことなのです。

 もう一つの事例紹介です。腕時計で時間を確認してもらいます。「いい時計をしておられますね。今何時ですか?」と聞きます。「11時17分です!」「ありがとうございます。」と言ってその人の時計を軽く握って見えなくします。「さて、今時計を見てみらいましたが、12時のところの文字盤の表示はどうなっていましたか?針の色は?」。持ち主は、どういうわけだか応えられません。苦し紛れに「アラビア数字の1と2ですぅ。針の色はシルバーだったような気がしますが。」としどろもどろになります。手を外して見せてあげるとまったく違う答えに、さらに追及して「これはあなたの時計ですか?昨日買った時計ですか?」「私のです。もう5年になり毎日使っています。トホホ」。嘘のようで本当の話ですが、2つとも実験してみてください。それほど意識しないと、今見たことも記憶に残らないのです。

 

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完全版・今すぐ実践!ヒューマンエラー防止策(第5回)

テーマ:余分なものはなくし、情報は少なく、目立たせる防止策

株式会社 SMC  松田 龍太郎

検数は単純なので、逆に間違いやすいのです

  工場や会社でも検数をしている時に、途中話かかけてこられたら、もう今までの数を忘れてしまうことを経験していると思います。数を数えることは、そう簡単ことではないのです。以外にも単純な作業であるがゆえに、逆に検数ミスが発生しやすい作業の1つです。100個以上の検数になると、10個を1つの塊りにして少し分けたり、20個の単位で分けたりして数えます。とても61、62、63などと数えておれませんので、「60。2、4、6、8、70。2、4、」というように2個ずつにしたりして単純化する工夫をしているはずです。それでも検数ミスがあるので、重量計など機器のサポートに頼ることになります。

 また、落語で有名な噺の1つに「時そば」があります。寒い深夜零時ごろ(江戸時代は、夜九つという)屋台のそば屋に行って、食べたあとに勘定を払うときの噺です。16文のそばなので、1文ずつ小銭を屋台のおやじに支払います。「ここに銭を置くぜ、1つ(ひい)、2(ふう)、3(みい)、、、8(やあ)」と言って、客が「おやじ、今何時だ?」「へい、九(ここのつ)でえ」。間髪を入れずに客は、「10(とう)、、、、16文、ごちそうさん」と言って素早く帰っていくストーリーです。「9の時」には1文を払いません。結局掛け声で、1文を上手くごまかすのです。これを別な客が見て同じ手口でごまかそうとするが失敗してしまうネタです。このエラーは、ヒューマンエラーでいう「スリップ」という種類です。作業の途中に外乱や考え事をしていると、ついついエラーをしてしまう現象ですが、実に多く犯しやすい現象です。

 次に図1のまず左側を見てください。〇はいくらありますか、数えてください。さて次は、右側に整列して配置したものですが、〇はいくつありますか?検数しなくでもすぐにわかりますね。さて、左側の〇はいくつでしたか?10個ですね。いや、11個かもしれないので、もう一度確認して検数したが、やはり10個かなあ?と不安になりませんでしたか。右側に整列したのは、10個のところに数字がついていますので、見ただけで10個と確認できました。その他の□や◇、▲や△、☆マークは、左側と同数を配置しました。騙されましたか?意地悪ですね。そうです、人は騙されやすいのです。手品やマジック、イルージョンが楽しいのは、なぜそうなるのかが一見わからないからでしょうか。

 

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完全版・今すぐ実践!ヒューマンエラー防止策(第6回)

テーマ:パッと見てスッとわかるように現場を整備しよう

株式会社 SMC  松田 龍太郎

ドイツでは、サッカーのレッドカードはお尻のポケットから出すのはなぜ?

  ドイツでは、レッドカードをズボンのお尻から取り出します。イエローカードは、シャツの左側の胸ポケットから出します。筆者も最初は、左側の胸ポケットにレッドカードとイエローカードを2つ入れておいて、工場内の不具合に応じてレッドカードやイエローカードを出していました。ある時現場改善で指摘項目があり、イエローカードを出すべきところを、間違ってレッドカードを出してしまいました。間違いをすぐに謝罪しましたが、その従業員は怒って家に帰ってしまいました。それほどサッカーの好きな国民の反応がシビアなことを思い知らされました。上司から電話をしてもらいましたが、電話にも出てくれませんでした。でも翌日に彼は出社して、再発防止の対策を取ってほしいと強い調子で訴えました。いつもは指摘する方ですが、指摘されることになりホトホト当惑してしました。

 その時に、彼の上司が良いことを教えてくれました。ドイツでは、レッドカードをお尻のポケットに入れて、イエローカードは胸ポケットに入れて区分しているというのです。そのために、レッドカードはドイツ語で「ヒンター・カルテ」(後ろ、お尻のカード)とも教えてくれました。サッカーの試合がテレビ中継でありますが、昔のテレビは白黒だったので、カードがライトに照らさせるとどっちかわからないことがあり区分したようです。

 試合中に反則があった時に、審判が笛を吹いて試合を止め、そして判定してどちらかのカードを出します。その判定の内容により、カードを差し出す位置が胸の方ならイエローカード、手がお尻の方に行けばレッドカードだと白黒テレビでもすぐにわかります。行動の先に見えるようにした好事例だと思います。それ以来、筆者はオーダーでYシャツの右側にもポケットをつけてもらうようにしました。右にはイエローカード、左にはレッドカードを入れるようにしました。オーダーのコストアップは500円ですが、ひと工夫で間違いはなくなりました。

 

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完全版・今すぐ実践!ヒューマンエラー防止策(第7回)

テーマ:似たものは同じところに置かない

株式会社 SMC  松田 龍太郎

似たものを置くのは人の習性ですが、間違いのもとになっています

  随分前に関東の病院で、肺手術と心臓手術の初老の男性の患者を間違えて、手術してしまったというとんでもないミスがありました。手術前には、それぞれの患者の担当の医者が本人確認しており、実際の手術の時に気づかないとは全く信じられないくらい情けないミスでした。経験豊富な看護師たちがいても、単純な人間違いをしてしまうのです。ヒューマンエラーは、どうも頭の良しあしだけではなさそうです。

 手術前には患者の名前の確認をしたそうですが、麻酔された後なので患者はもうろうとしており、「はい」という返事だけで本人確認ができたと看護師は勘違いしてしまったのです。つまり、「念には念を入れる」というひと確認が不十分だったのです。

 ベッドから手術前の準備室まで搬送した看護師と、準備室から手術室に搬送した看護師が別々であり、たまたま同時に2人の患者が一緒になり入れ違えたのです。その時に、フルネームで患者を確認するとか、カルテと本人確認のためのバーコードのついたタグをチェックするとか、顔を確認するとか、いくらでも本人確認することができたはずです。まあ後の祭りですが。この事故がきっかけとなり、全国的に話題となりました。

 現在の病院では、本人確認のためにフルネームで患者に自分の名前を言ってもらう、バーコードでダブルチェックする、さらには1人ではなく2人で行うなど、確認方法が変わってきました。

 このようなヒューマンエラーは、私たちの職場でも日常茶飯事のように発生しています。似たようなものを隣に置くことは自然な行動であり、慌てていると間違えやすいものです。ここに改善のヒントがあります。

 

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完全版・今すぐ実践!ヒューマンエラー防止策(第8回)

テーマ:思い込み・先入観は、直前に確認するとかなり防ぐことができます

株式会社 SMC  松田 龍太郎

備忘録と忘備録はどっちが正しいですか?その訳は説明できますか?

  著者は、忘備録(ぼうびろく)と呼んでいましたが、どういうわけか文字で書くときには、「備忘録」と堂々?と書いていました。誰れかが指摘してくれる訳でもなく、何事もないまま日常的に使っていました。相当無神経ですが、一緒のことだと勘違いをしたままになっていました。どっちが文法的に正しいかですが、これもあいまいな答えにならないように、ちょっと原理原則を紐解いていきましょう。

 「登山」という言葉は、山に登ることです。「入金」は、金が入る、「出金」は、金が出ると書きます。つまり、「備忘録」の「備忘」は、“忘れることに備えるための記録”がその意味になります。「忘備録」は、“備えることを忘れるための記録”になります。はやり、何か日本語として変です。「読書」は、書いたものを読むです。「書読」は、読むことを書くとなると魔法のようにつじつまが合わなくなります。漢字には、このような原則があったのです。

 実は、「固定観念」も長い間、「固定概念」だと思い使っていました。ある時、たまたま辞書を引いたのです。ない!?なんで?と探しました。「固定概念」は辞書にはない熟語でした。つまり、誤用だったのです。昔の文章を見ると、その証拠がいくつも残っています。今見ると、穴があったら入りたい心境です。知らないことは、何とも恐ろしいことです。さらに調べてみると、なんと国民の約5割の人もこの間違ったまま使っているので、何とかホッとしました。でも間違いに気づけば、すぐに訂正することです。

 それが、ヒューマンエラー防止策の良い方策でもあるのです。それ以降は正しく記述しています。これらの勘違いは、完全な思い込みです。思い込みですから、何かの大きなインパクトがないことには、訂正も修正もできないのです。恥をかけば、冷汗まで出てしまいますので、即刻変更したいものです。

 若者言葉に、「ヤバい」があります。年齢を取った人たちには、「ヤバい」は隠語で身の危険が迫ったときや都合の悪い状況のとき使う言葉が常識でした。著者の車は1981年製のクラシックカーですが、それを見た若者が「ヤバい」と言ったのです。その時には、「超かっこいい」という意味とは分かりませんでした。今では、「現代用語辞典」にも掲載される用語になりました。時代が言葉をつくっていくものですが、原理原則も知っておくことも大切だと思います。

 

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完全版・今すぐ実践!ヒューマンエラー防止策(第9回)

テーマ:コストも時間もかけないですぐできる5S+表示標識のやり方

株式会社 SMC  松田 龍太郎

即効性のあるヒューマンエラー防止策の紹介です

  ヒューマンエラーの原因のほとんどが、些細なことが積もり積もって発生しています。その些細なことのゆえに、何も感じない、何も考えない、何も対策を取らないことで、粉塵爆発のように一気に事故や災害になっていくと考えます。つまり、知らなかったからなぜそんなことになるのかを想像もしなかった、知っていたつもりだったがその時は忘れてしまった、思い込みだったなどの原因があります。しかし、行動を起こす前に、不要なモノがいっさいなく、また汚れやホコリがなくキレイで見やすい表示標識があれば、ちょっと確認することで、ミスをすることが大抵は防ぐことができるのです。

 事前に知ること、わかることができることで、多くのミス防止が可能になります。それが、5S+表示標識のやり方だと考えます。これはコストも時間もかからないので、見積りも稟議書も必要もなく、職場の合意だけで実践できます。人の記憶はとてもいい加減なことは、何度も紹介しました。ならば、「記憶力よりも、記録力が大事」として、必要な個所に的確な表示標識をして、ミスの発生を事前に踏みとどめたいものです。モノや情報があり過ぎては混乱しますので、「整理→清掃→整頓+表示標識」をして環境整備して、効果が出やすいようにしておきます。

 その最たる表示標識の事例と考えるのが、写真1のゴミ箱の位置表示です。これを最初に見た時は、ガーンと脳に衝撃を受けました。ゴミ箱の「▼」マークと床の「▲」マークを合わせるというとても単純なものです。しかし、人の心理を上手く利用したアイデアで、少しでもずれると合わしたくなる心理になります。某指導先の改善提案でしたが、何と賞金は100円だったと言います。1万円の賞金が出ても良いくらいの提案です。

 これをパソコンで作り、ラミネート処理して両面テープで貼り付けします。普通にゴミ箱の位置表示は、直径約25cmの周囲を囲みますので、約140cmになります。ところが、この▼▲マークは、8㎝幅ですから、合計16cmで済みます。しかも貼り付ける前は、はがれないようにキレイに清掃が必要です。テープ代、掃除と清掃の工数、そのあとはがれた場合の修理工数は、とても比べることができないほどの効果があります。

 某工場で、このヒントを基にテーブルの灰皿に使ったのです。それまでは、誰も吸い殻を片づけようともしなく、山のように積もり上げたままテーブルも灰だらけでした。▼▲マークを貼り付けたら、毎回吸い殻を捨てテーブルも拭くようになり、しかもマークを合わせるようになったのです。ウソのような本当の話です。

 

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完全版・今すぐ実践!ヒューマンエラー防止策(第10回)

テーマ:簡単ですぐできる注意式のランプとブザーの組み合わせ

株式会社 SMC  松田 龍太郎

光と音を使って人に喚起させる注意式の防止策

  ヒューマンエラー防止策の別な呼び方として、ポカヨケがあります。これには、2つの方式があり、1つは注意式と呼ばれるものと、規制式があります。今回は、前者の注意式の防止策を紹介します。

 注意式は、規制式に比べてコストがかからないので、比較的簡単に現場でも設置ができます。ただし、注意を喚起して人に気づかせることが主体となっており、喚起してもきづかなかったり、逆に故意に無視したりしてやらかしてしまうこともあります。規制式は、それ以上の行為ができなく、次の作業に移れない強制的な面があります。まずは、喚起して違反をしないように仕向けます。それでもやってしまう場合に、少しコストがかかり複雑な動きも伴う規制式にステップアップしていくとよいでしょう。

 しかし、この光だけではどうしても喚起が不十分なことに、皆さんは気づかれると思います。目覚まし時計では、必ず音を併用しなければなりません。光よりも断然音が重要です。出張に行く時は、携帯電話のアラーム機能は当然です。でも万が一の場合を考えて海外の場合は、いつもアナログ式の目覚まし時計を携帯しています。

 ホテルのベッド周辺に設置されている目覚まし時計も使います。必ず時間をセットした後に、実際アラームが鳴るかどうかもチェックします。場合によっては、電話でのアラームをセットします。海外は、故障がちょくちょくあるのです。ここまでしないと遅刻したら仕事がなくなることがあるので、念には念を入れます。遅刻は今もゼロです。

 これに加えて、携帯でのアラーム機能にある居眠り防止の「スヌーズ機能」も1つだけでなく、2つ入力します。例えば、5時半と6時です。何重にも用意して、絶対に寝坊しないようにしています。週末は、一切この機能はすべて切り十分に睡眠をとります。

 西郷隆盛は、目が覚めると一気に布団を足でけり、二度寝をしないようにしていたそうです。そこまでの精神力が足りないので、スヌーズ機能はまだ愛用します。

 身近な事例として、ATM機の現金やカードの取り忘れ防止、エレベーターの重量オーバー、車の半ドアや鍵の取り忘れ防止、IHクッキングヒーターの過熱防止、風呂の湯沸かし装置など、普段気づかないものですが、探すと実に多く生活のなかに組み込まれています。中には音声で、状況説明や指示までもしてくれる機能も付いている機器もあります。

 

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完全版・今すぐ実践!ヒューマンエラー防止策(第11回)

テーマ:注意式よりも確実な規制式のヒューマンエラー防止策

株式会社 SMC  松田 龍太郎

ヒューマンエラー防止策は、異常のアクションのきっかけと考えます

  ヒューマンエラー防止策を講じても、完全にミスは防止できないのが実情です。真因の発見がまだ表面的であったり、別な因子であったりすることは往々にしてあります。そこでヒューマンエラー防止策を最終手段として考えてしまうのではなく、一歩手前の異常のアクションのきっかけとして、捉えてもらえればと考えます。完全に封じ込めたと思った瞬間に、大抵は再発してしまうことがあるのです。これはお恥かしながら著者の経験知です。

 このアクションは、4つあります。①は、アクションがすぐにわかることです。これは、注意式にあったアンドン、ランプ、ブザーで喚起し、すぐに作業や機械を止めて真因を追求するものです。多くの場合が、処置だけで済ませることが多く、しばらくすると再発してしまいます。これは処置だけしかできないという組織的な問題もあります。そのために、改善や対策が実行できるチームリーダー、班長などオペレータ以外の人にも加わってもらう必要があります。いつまでもモグラたたきをしていては、企業は生き残っていけません。

 ②は、不良が造れないことです。加工、組立時に不具合があれば次のステップに進めなくするものです。この実例は、車を駐車場から出庫する時にチケットと正しい料金を自販機に投入してOKになれば、遮断棒が上がり出庫できる仕組みです。

 ③は、不良を造らないことです。標準作業の徹底、設備の良品条件の整備、作業環境を整えて、不良が造れないようにすることです。これは指導、教育、訓練が伴い時間もかかります。しかし実施ができれば、不良手直しがゼロになり、仕掛削減、リードタイム短縮、生産性の飛躍的向上ができ、コストダウンができ儲かるようになります。

 ④は、不良を後工程に流さないことです。生産したモノを全数自主検査して後工程に流します。自分がつくったモノを自分で全数検査しているのは、毎日の家庭料理と同じことです。知らない顧客だと自覚がありませんが、愛する家族のためなら手間を惜しみません。日常でもATM機でカードを挿入し、暗証番号、金額を入力しないとお金は出てきません。さらに取り忘れがあれば、アラームで喚起してくれます。

 

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完全版・今すぐ実践!ヒューマンエラー防止策(第12回)

テーマ:お金を使わないでもできる簡単な防止策

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正常、異常、途中経過がわかるように「見える化」する

  ヒューマンエラーのほとんどが、たわいもないこととその積み重ねによるものと紹介しました。ヒトはお尻に火が付かないことには、即行動しない動物のようです。でも急にお尻に火が付けば、慌ててしまい普段の行動ができなくなり、ほとんどの場合が失敗につながるものです。そこで、普段気づないことや見えないことを、誰が見てもわかるように「見える化」します。異常があればすぐに行動し対処することを、職場で習慣化することが大切だと考えます。

 「見える化」することで、次の行動をどうやればよいかが見えてきます。そして、次の行動はどうすれば良いかの対処もわかります。さらに“清掃”の思想と同じように、汚れを取りキレイにすることで、原因や真因がわかり、再発防止策も考えて対処する習慣を身につけていくことが大切です。時間はかかりますが、その効果は想像以上です。

 対処を習慣化することで、慌てるような状況でも、迷わない、探さない、考えなくてよい、相談しなくてよいなどのムダやミスやエラーもなくせます。これらがなくなれば、誰でも同じように作業ができるようになり、品質も時間も生産性も“バラツキ”が少なくなり、いずれも向上します。その方法が、以前にも紹介しました「5S活動」と「目で見る管理」です。実際には、整理+清掃+整頓と表示標識の3Sです。

 その実例の1つを紹介します。現場で備品がなくなった時に、工員が事務所まで行って、「A部品を明後日までに、1箱発注しておいてください。」と伝えます。たまたま担当者がいなく、別な人に頼みました。何日も経っても納入されないので、その工員が事務所に行き、「A部品まだですか?」「あっ、忘れていました!これから電話します。あとで連絡します。ごめんなさい。」云々。その間の工数はいくらになりますか?代替品を探したり、工程を入れ替えたりなどムダはいくらですか?また忘れたことで、人間関係も悪くなります。

 そこで、「発注カード」をつくり、それを入れるポストを設置し、納入日にその発注カードを入れる仕組みをつくりました。部品がなくなる前に取り付けられた発注カードを、工員がポストに投函します。納入業者は事務所ではなく、直接工場に来てもらいます。毎日、2日に1回などルールを決めます。発注カードを見た納入業者は、品目数量を確認し、納入日(発注済み)のポストに「確かに受注しました、○曜日に納入します。」と意思表示をしてカードを入れます。納入日には、現品とカードを工員に渡し、伝票は事務所に渡します。工員は発注済みポストのカードの位置を見れば、納期がわかります。しかも事務所とのやり取りの時間も歩行ロスもありません。念のために、ポストの横には1枚の簡単なルールも掲載しておきます。

 

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