4.やらなくてよいことを見つけ出す

 1日24時間では、足りますか?

 

 1日が24時間と言うのは、万人に与えられた共通の時間枠ですが、その使い方は実に多種多様です。時間の達人は、24時間を30時間のように活用して他人より何倍の仕事をこなす人がいて、大切な仕事を任すなら「忙しい人に頼め!」と言われるほどですね。逆に下手な人は、その日の仕事を終えることが出来なく、残業をしたり他人に手伝ってもらったりしてやりくりしています。普通に仕事をしていますと、やるべきことが段々増えてきて、時間が足らなくなるものです。そのために事前の綿密な計画を立てるようにしますが、そうしても予期しなかった飛込みのアクシデントや雑用などが入ってきてしまうと、当初の計画が無残にも無しの礫(つぶて)になってしまうことは世の常です。そうこうしていると、手を十分に打っていなかったことが突然に綻びてしまい、問題が問題を呼び起こす増殖状態に陥ってしまいます。後手後手の仕事になり、ついには悪魔のサイクルに突入して二進も三進も行かなくなり発狂しそうになりますが、ご多分漏れず著者も同様な時期がありました。(汗)

 

 その対応としては、一番簡単な方法が時間延長して仕事の時間をつくるという残業の手段があります。8時間で出来なかったことを、残業することで何とかやりくりが出来ます。いったんその手を使い出しますと、毎日残業が普通になってしまい、8時間の仕事を10時間でやればよいという逆に間延びした仕事になるものです。なかには、ワザと8時間で出来る仕事を残業して残業代を稼ぐ給料泥棒もいるかもしれませんが、このように間延びさせることは問題のすり替えであって、時間の問題解決にはなりません。しかしその方法ではなく、仕事を改善して短時間で出来るようにするのが本来の打ち手です。仕事を標準化して、山積み表のように山崩し谷埋めのように負荷の少ない人に再分配したり、仕事を多能工化して誰でも出来るようにしたりする方法もあります。

 

 

計画とは、要らないものを明確にして捨てるもの

 

 この仕事の改善のやり方について考えてみます。仕事を時間どおりにやるには、計画を立て全体が見えるようにして管理することが一般的です。その時にやりがちなことは、何でもかんでも計画の中に盛り込もうとする欲張り主義があります。狙った高い目標を達成するために、色々な項目をドンドン計画の中に入れ込んでしまうのです。できそうもないことまで計画に詰め込んでしまい、挙句の果ては絵に描いた餅になってしまうことが往々にしてあるものです。余りにも多くのことをやろうとするので、逆に本当にやるべきことがわからなくなってしまうのですね。

 

 

 計画を立てるということは、必要なものを取り込んでその枠内に上手く組み込むことのようですが、実は要るものと要らないものを明確にして、本当で必要なものから優先順位をつけていくようにすればよい方法もありますが、要らないものにも注目してみましょう。

 

 一つの事例として、工場を訪問していますと色々な掲示物を見ることがあります。なかには、1つの管理板に数十枚におよぶ帳票やグラフなどが展示されていることがあります。従業員の皆さんにインタビューしてみましても、ほとんどの場合貼り出した時に目を通すだけで、この提示物から自分たちは次にどのようにすべきかと言うアクションを意識することはほとんどないそうです。著者が拝見しても、作成者の意思がほとんど見られないものばかりです。言い方は悪いかもしれませんが、苦労して作成した人に対して、その労力に対しての報いはあるか疑問を持たざるを得ません。その人も誰か上司の方から強制的な作成命令により、「やらされ仕事」であったかもしれませんが辛いですね。

 

 著者なら苦労して作成したグラフには、さらに手を加えて、皆さんにはこの結果よりこのようにして欲しいなどのコメントを記入します。しかもそのアピールしたい部分を手書きにしますと、従業員の方は覗き込むように掲示物を見てくれます。面白いもので、ワープロやパワーポイントなどの機械的な処理をした提示物よりも、少し綺麗とは言えない手書きや下手な漫画を入れた方が、人は興味を持ち食い入るように見るようです。少し手を加えてでも、皆さんの感心事にしてアクションに結びつけることが大切だと思います。

 

 このように工場内では、付加価値はないものが従来からやっているので、ずるずると習慣になってしまっている仕事や作業が非常に多くあるはずです。今までのものの見方ではなく、その仕事の目的は何か、成果は何かということで仕事や作業を見直すと良いでしょう。

 

 

 

やめることは何かを考える

 

 時間は有限ですので、それを上手く活用する方法として、発想を替えて「やるべきこと」よりも「やめること」は何かを考えて見ましょう。今までやるべきことに注力しすぎて、何でも取り込もうとしていたものを、時間を有効に使うために、やめても良い仕事や作業は何があるかを真剣に探していくのです。これはつくり上げていくことではなく、あるものを打ち崩していく考え方なので、考えようによっては非常に簡単だと思いませんか。これには上司や今までの習慣とのしがらみがあろうかと思いますが、この際時間がないことを口実に思い切って、そして反発に対しての少し勇気を持って、インプットに対してアウトプットが少ないものや付加価値の少ないものなど、ドンドンやめていくようにしていきます。

 

 有名な会社の話ですが、一年間の失敗を集めて最も大きな失敗をした人を、大金の賞金まで付けて表彰する制度があります。これも会社にとって非常に辛い失敗を全員にオープンにして、二度と同じ失敗を繰り返さないようにしましょうとアピールする非常に優れたやり方だと思います。ネガティブなことをオープンにしないのが、被害が少なくて済むように思いますが、会社にとっては逆に再発防止やその効果が非常に期待できるはずです。

 

 今までは「何をしようか」と躍起になっていましたが、それも大切ですがそれと合わせて今後は、「何をやめるべきか」を書き出してみましょう。一度にたくさんのことはできないものなので、少しずつ1つでも良いから行動に移してみましょう。これは何故かと言いますと、脳の潜在意識の現状メカニズムが働いていますので、一気に変えることは無理なのです。少しずつ、しかも毎日やっていくものですが、そんなにも労力自体は必要でなく、発想を変えるだけなのです。たくさん「やるべきこと」よりも、1つでも「やめること、やらなくてよいこと」の重要性は、今後の皆さんのご体験で実感されると思います。「時は金なり」と言う諺がありますが、著者は持っておくことができないので、「時は命なり」と思っています。