5.改善の眼を養おう

現場を歩いてもムダがすぐに発見できないのは?

 

 

  毎日働いている職場では、製品を如何に早くしかも多く作るかと言うことに一生懸命になっていて、どこを見ても問題や危険個所、不安全行動さらにはムダも見えなくなるようになっていますが、これは非常に残念なことです。とは言っても毎日同じことの繰り返しでは、脳が麻痺していて仕方のないことかもしれません。しかし、これらをすぐに気付く人もいるのです。決められた仕事は勿論確実にやりあげ、しかもそれらの問題に対してすぐに行動を起こして、改善までもやってしまっていますが、この違いは一体どこにあるのでしょうか?改善を良くやる人の頭が2つありますか?そして手は4本もありますか?そのような違いはなく、外見は私たちと同じ人間ですね。

 

 本当に製品を早く多くつくることが、あなたが会社に来てやる仕事でしょうか?本来会社に来てやることはなんでしょうか?一見見当違いな質問のようですが、このことがわかっていないから、目先のことに追われてしまったようになり、もう少し先のことが見えなくなっているから、何をすべきかが分からないままで仕事をしてしまっていることが実に多いのです。これらの質問は、訪問した会社に行くといつも質問することの一つになっていますが、腕時計の文字盤と一緒でなかなか正確に答えて頂けることはありません。仕事が出来て、しかも改善も確実にやっている人はどこが違うのでしょうか?今回はそこを考えて見ましょう。

 

 

 

まずは現状把握ができ、そしてあるべき姿を描けること

 

 

 

 管理のマネジメントサイクルに、『PDCA』があります。これは、読者の皆様も良くご存知のPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価・点検)、Action(処置・改善)と言う頭文字をつなげたもので、これを1サイクルとして螺旋のように何度も回して、計画通りに仕事を進めていくものです。これは最初にPlanの計画がありますが、現場の問題解決のマネジメントサイクルはスタートを変えた方が良いと考えます。まずCから始まり、次にAそして、PからDになり、『CAPD』のサイクルで回していきます。

 

 

 

 それでは、具体的に説明をしていきましょう。まずしっかり現状把握(C)をすることであり、事実を知っていなければ適正な原因や真因(A)が追求できません。そして、あるべき姿のイメージをしっかり頭のなかで描けること(P)が必要になります。現状把握で得た事実から、その原因や真因を発見して、あるべき姿を比較しながらその隔たり(ギャップ)がどれだけあるかを見ます。そのギャップが離れているほど問題は大きく、解決すべき課題があるということになります。逆に現状把握をしたときに、十分に調べなければ問題は発見できません。発見できたとしても、小さな問題になってしまいます。さらに、あるべき姿を知っていないと、どこまで改善をすればよいかが分かりませんので、小改善に留まってしまい、満足感も少ないものになってしまいます。これらから改善案を出して、あるべき姿になるように改善(D)を繰り返しながら進めていきます。

 

 さてこれらを、1人でやろうとするとどうでしょうか?1人でやるということになれば、かなり素質があり、相当訓練しないことにはやれないのが現状です。そこで、すぐにできる方法を紹介します。これは1人ではなく、数人のチームを組むことです。1人では気が散ってなかなか集中できない、一方向からしか観察できない、自分のレベルでしか観察できない、一度に定性的なことと定量的なことを観察できない、狭い範囲しか観察できないなどの欠点があります。チームでやりますと、一度に多くの事実を顕在化することができます。さらに、多くの見方ができ、お互いのレベルアップもしやすくなります。また定量的なことも、他の人に任せれば確実なデータが取れます。

 

 さらに用意したいものは、標準作業票や標準作業組合せ票などの標準類です。これは観察するときのモノサシになり、標準との違いやバラツキが発見しやすくなります。観察時間は、1時間を目安にします。そして観察するのは、「人」です。設備や治工具、部品、仕掛り、伝票類など、これら自体は動きませんので、それらを動かしている「人」を観察します。「人」はこれらを自由に動かしていますので、その動かし方に注目するのです。それは、「人」によってそれらの動かし方が違うので、バラツキや問題が発見しやすくなります。別の「人」にもやってもらうと、違いがより顕著に見られます。

 

 あるべき姿は、多くの改善事例を参考にします。今では多くの改善事例が写真で掲載されていますし、他の職場に行くことも非常に参考になります。最初は、「真似る」から始めます。付加価値のある仕事とは何かを、いつも考えることが大切です。9割以上の作業は、付加価値のない仕事ばかりですので、改善のネタを心配することはありません。この付加価値があるかないかをいつも見極めるようにして観察していけば、見えなかったムダは、常に意識することによって自然に見えるようになってきます。!

   

 

 

改善の目的は、良い人生を送ることにある

 

 

 本当で改善をやっている人は、イキイキとかワクワクして仕事をしておられると思いますが、周りから見ていても何故か輝いているように見えてきます。その領域になった人は、改善することによって自分のことだけではなく、その工程や前後工程も良くなり、さらに会社が良くなり、お客様まで喜んでもらえるということが身体全体で分かっておられる人です。そのことが、自分の自己成長につながっていることも気付いておられる人です。そのために、その人は輝いて見えます。改善提案の報奨金だけのためにやるとか、自分の利益のためだけと言うのは悲しい行為です。一時的に儲けたように思いますが、それは長続きするものではありません。

 

 改善をやって結果を出して、きちんと周囲の人から評価され、褒め称えられ、ますますやる気になって、さらに良い結果を出して行くと言う天使のサイクルを回していけば、結局良い人生を送られると考えます。それは仕事だけではなく、家に帰ってからでも家庭内での行為や住んでいる地域にも、その姿勢は善の行動となっていくものでしょう。

 

 人は他人から認めて欲しいものであり、認めてもらうとまたやる気が出てやりたくなるものです。それがやる気を継続させる原動力になり、周囲に広がっていきます。現場を歩いて改善したところをすぐに発見し、すかさず褒めてあげることは上司の仕事です。