完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第11回)

紙1枚の重さは何グラムですか?

 軽いものほど重量はわからないものです

 A4のコピー用紙は、通常500枚単位で包装されており、コピー機に入れ替えする時に結構重いことを経験されたことがあると思います。あの重さはいくらくらいでしょうか?両手で持ってみますとキログラム単位の重さがあると想像できます。「そのA4一枚の紙の重さは何グラムかわかりますか?」と一枚を手に取ってもらいます。多くの人にこの問いを投げ掛けても、なかなか答えが返ってきません。紙一枚となると持ち上げて眺めていても、その重さを想像することはできません。また、台所にある台秤で、数グラムの辺りは微妙で計測が怪しくなっています。でも頭をちょっと捻ることで、簡単に軽い1枚の紙の重さを推定することができます。

 A4の大きさはDIN規格で決まっており、297mm×210mmです。500枚の包装されたコピー用紙の厚さは、これはモノサシで測定できます(4.5cm)。その厚さを1枚単位にするには500で割れば約0.1mmとなります。そして、紙の原料はパルプつまり木材です。その比重は水より軽く浮きますので、1より小さいことが想像できます。それを0.8と設定してみますと、面積×厚さ×比重=重量となりますので、A4の用紙は一枚が約5グラムとなります。

 ですから、A4のコピー用紙の500枚梱包のもので2.5キログラムとなります。A4を実際に測定しても4.5~5グラムの範囲です。海外では、1㎡あたり80グラムとか90グラムという表現もあり、80グラムのものは1枚5グラムになります。また、湿気で少し重くなり、飛行機の中では乾燥し過ぎて反り返ってしまいますが、紙は生きていることを感じます。どうも人は軽いものの重量を把握することは、苦手のようです。

 

では1円玉の重さは?

 財布に入っている1円玉の重さは、きっちりと1グラムです。5枚だと5グラムになり、割り箸と糸で簡単な天秤棒を作れば、即席の重量計が出来上がります。しかも直径は20mmであり、寸分の誤差もありませんので、横に並べるとモノサシのようになります。5個並べると10cmになります。また、5万分の1の地図に1円玉を置くと、距離が1kmになることが分かります。1円玉は1954年に発行されてから約70年になりますが、古いタンスからこの当時の硬貨を探せば価値が上がるかもしれません。昭和47年のものがありましたが、長年流通しています。ずい分古いです。

 さて、1円玉の厚みはいくらでしょうか?1枚だと計測しにくいですが、10枚重ねると誤差は10分の1になり、精度が上がります。答えは1.5mmです。このように身近にあるものを、簡単なモノサシにすることで測れないと思っていたことが測れるようになったり、精度も向上させたりすることができます。定規だけがモノサシではなく、何か代用になるものがあるはずだという諦めない姿勢が大切です。これを繰り返していくと、いつもは見えなかったことが段々と見えるようになってきます。

 財布の中にある硬貨の重量は、5円玉が3.75グラム、10円玉が4.5グラム、50円玉が4グラム、100円玉が4.8グラム、そして500円玉が7グラムです。1万円は1.02グラムでわずかに1円玉より重くなっています。でもすり減ってしまうので、寿命は2から3年程度のようで、特に千円札は1から2年で交換されます。このためにお札には製造された年度が記入されていませんが、お気づきでしたか。

 ちなみに千円札、五千円札、一万円札の共通した大きさは、縦幅が76mmで同じになっています。横幅は千円札から順に150mm、155mm、160mmです。切符販売機や飲み物などの自動販売機での札を入れる部分の大きさは、76mmで統一されています。ところで、2000年に発行された二千円札は最近お目に掛かっていませんでしたが、沖縄に行った時に首里城でお釣りに出てきたのがこの二千円札でした。横幅は154mmになっており、五千円札とは微妙な1㎜違いです。

 

お札を虫の眼で見てみるとすかしも見えて来る

 10年、20年単位でお札が更新されていきますが、これはコピーの精度が高くなり、偽札を防止するための予防策です。色々な手段を酷使しながら、偽札が造りにくいようになっています。フォログラフィーや特殊インクも凸版印刷もありますが、古典的なものとして、すかしや点字の認識マークの工夫や技術があります。

 お札の左下に点字の認識マークがあり、以前は千円札が点字の「あ」:◎が1つ、五千円札は「い」:◎が横に2つ、一万円が「う」:◎が縦に2つでした。ところが2000年に二千円札が発行されることになり、この秩序が守れなくなりました。そのために苦肉の策として、◎を●にして縦3つで点字の「に」:二にしたのです。現在は千円札が横棒になり、五千円札が八角形(丸に近いので判別しづらい)、一万円は左右の下にLとLの逆字(時計の9時の形)になっていますので、一度見比べてください。他にも違いを持たせる技巧が、一枚のお札の中にたくさん仕組まれています。

 この点字は缶ビールにも応用され、当初は「びいる」となっていましたが、その後色々なアルコールが登場したので、現在は「おさけ」になっています。プルタブを引っ張ると、テコの原理でフタの切り込みが凹んで飲める状態になりますが、この形状は左右対称ではありません。なぜでしょうか?曲率半径をワザと大小にして力が一点に集中する仕掛けになっているのです。プルタブを少し左にずらし(11時の方向)そこから引くと、力が少し弱くても右下(5時の方向)に切れ目が発生して一気に開けることができます。これは指の力が弱い人から、生活の知恵として教えてもらいました。

図1 A4一枚は、100円玉とほぼ同じ重さ。

図2 1円玉と一万円札はわずかに一万円が重いが寿命は3年。