完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第2回)

空気は見えませんが、実は見えるのです

  空気が見えますか?誰も見えないといいます 

   私たちの目の前には、たくさんの空気つまり窒素や酸素があり、さらには二炭化炭素もありますが、私たちの眼には直接見ることができません。そこで「空気が見えますか?」と訊ねても、誰もが見えないと答えます。空気は直接見えませんが、風がなびいて田んぼの稲が揺れることで、空気の流れやどの方向に吹いているのかがわかります。「サトウキビ畑」という歌では、だわわ♪だわわ♪という風の音も聞こえてきます。それらのことで、風つまり空気の流れや存在を感じ取ることができます。また高速道路や飛行場に設置されている風向計、吹流し、さらには鯉のぼり、風見鶏や風力発電の風車でも、空気の存在を知ることができます。煙がたなびく様子も見ると、風速もわかります。海面からも波の様子で、風速がわかります。「木の小枝が震え、旗がはためきはじめる状態」と「海面で波頭が砕けはじめ、その泡がガラスのように見える状態」から、風速は3.4から5.5m/秒(約7から11ノット、1ノット=1.852km/時間)と分かります。

 魚は、空気の存在を知りません。彼らはいつも水の中で生活しており、水があることも知らないかもしれません。空気の存在を良く知っている顕著な魚は、トビウオだと思います。大きな魚に遭遇した時に、逃げるために勢いよく海中から空中に飛び出して、胸ヒレを大きく広げて風に乗り、時には400mも海面を飛び交います。多くの魚は、釣りあげられた時に、体全体を大きく振り回し暴れます。釣り上げられて初めて、水中から飛び出して水のない世界に放り出されます。その時に、回りに水がないことを体験して大慌てしているのです。もし空気の存在を知っていたら、「ボク、釣り上げられました。」といってまな板の鯉のようにおとなしくしているはずです。あくまでも推察ですが、魚は釣りあげられた瞬間に、水と空気の存在を初めて知ることができると思います。

 多くの人にものを訊ねると、反射的に思いついたことを答えてしまうものです。まるでオウム返しのようであり、ほとんど思いつきの答えなのです。昨今の情報化時代になってから、私たちは一度じっくり考えてから対応することが少なくなってきたようです。

 

人は自分が見えないし、自分がわからないものです

  「あなたは、ご自分の背中や後頭部を見たことがありますか?」と訊ねると、「当然見たことがある。」と答えます。さらに問い質して、「ご自分の眼で直接ですか?」というと、「うーん、実は鏡だ!」と返事が返ってきます。鏡は左右対称に写っており、あくまでも虚像です。「直接見ることができますか?」とさらに問い詰めると、「それは、、、、?」と情けない返事が返ってきます。自分の背中や後頭部は、ろくろ首のお化けしか見えないのです。さらに問い質して、「ご自分の眼の前の“まぶた”をみたことがありますか?」と訊ねると、皆さんが困った顔をされます。「実は起きている間でも、毎日約2万回も見ているはずですよ!」と投げかけます。「え!?え!?え!?」と驚きの声が出ます。起きている時間は、約16 時間。まぶたを開閉するまでの平均時間を約3秒とすると、16時間×60分×60秒÷3秒=19200回≒2万回になります。

 余りにも間近にあると、何ごとでも見なくなるものです。皆さんの職場も一緒で、毎日見ているとムダも見えなくなってしまいます。普段は意識していないので見えないのですが、意識して他人のまぶたの開閉時間を観察してみてください。何も意識していないと平均3秒です。いくらまぶたを閉じようとしなくても、せいぜい30秒が限界です。眼球が乾いてしまい、ついついまぶたを閉じてしまいます。でも普段まぶたを3秒ごとに開閉しているのですが、余りにも眼の前にあるので見えなくなっているのです。女性は化粧をする時に片方のまぶたを閉じて、眼の周りの化粧をされます。片方の眼を閉じることでもう他方の眼の周囲を見るのです。これはものを客観的に見る一つのヒントです。

 

色々な方法を知ることで、見える対象が拡がります

 軽乗用車で駐車する時に、自分の車の後ろだけでなく、360度全方向が見える画面が装備されたことを売り文句にした車が発売されるようになりました。恐らく縦列やバック駐車の苦手な人がいたので、全方向が見渡せるカメラを装着したちょっとした工夫を商品化したものです。全方向が見渡せるカメラを装着したことで、駐車する際に今まで見えなかった部分が見えるようになり、空スペースを確実に確認しながら安心して運転ができるようにしたものです。これは、顧客のニーズから商品化したものでしょう。さらにもっと突っ込んで問い詰めていくと、メーカーも顧客も気づかなかったシーズ(種)があるはずです。一見見えないものですが、問い詰めていくとニーズからシーズも見えるはずです。そして気づかなかった画期的なアイデアも出るようになります。もっと深堀りしてみましょう。

 この操作を可能にしているのが、各種のセンサーです。障害物までの距離を感知するバックソナーは、ピエゾ素子を使って観測して警告音などで距離感を運転手に知らせます。これはセラミックを応用したもので、他にも色々なものを観測するために、光センサー、近接センサー、磁気センサーなどがあります。これも人の眼で見えなかったものを、モニターで見えるようにしたものです。これらはいずれも、今まで見えなかったものをどうしたら見えるようになるのかを考え、試行錯誤しながら創り上げたものです。困ったことを、とことん追求することで欲しい形にすることができるのです。その原動力は、旺盛な好奇心と決して諦めなかったチャレンジ精神だと思います。

 旅に出ることは、多くの人の楽しみです。見知らぬ土地に出かけて行き、新しい出会いや道中のハプニングなどもあります。自宅に戻ってきて、「ああ、やっぱり自宅はいいなあ。」と思わずつぶやくことがあります。自分の立場を離れることや再び戻ることで、改めて双方の良さや悪さも見ることができます。積極的に自らの環境を変えてみましょう。

 

 

図1 空気が見えますか?少し考えてみると見えるようになります。

図2 色々なものを活用して見えるように変換してみましょう。