完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第6回)

100円ライターの寿命は何回?

 そもそも100円ライターのライバルはマッチだった?

 タバコを吸い始めたのは、真面目に20歳を過ぎてからでした。それまでは軟式庭球をやって、さらに中距離も走っていたので、タバコを吸っている人たちとの持久力は全く違っていました。その反動があったのか、吸い始めてからすぐにパイプタバコと兼用しながら紫煙を謳歌していました。数十年前は喫茶店が色々な嗜好でオープンしていたので、喫茶店の宣伝用にマッチが必ずと言っていいほど店に備え付けられていたものです。そのマッチの色とりどりの絵柄や5cm角もある大きなマッチなど収集するにも楽しみがあり、マッチ箱を数百点もアルバムにして楽しんでいました(現存します)。

 煙草屋でタバコを買って、ついでにマッチも買ったら5円だった記憶があります。そのマッチの軸の数がおよそ20本でした。当時の両切りタバコ「ゴールデンバット」(1906年以来製造中)が何と30円でした。100円札(当時は板垣退助の肖像画)で3つ買っても、10円のお釣りがありました。ちなみに2018年4月には330円に値上がり、惜しくも2019年に生産中止。そのタバコの本数も20本であり、失敗をしなければマッチ1箱でタバコ1箱が吸えた勘定になります。マッチとタバコは、1対1の非常に良い関係であったと思います。当時は喫茶店と言いながらもタバコをくゆらす場所であり、禁煙なんて言葉も聞いたことがなかったほど皆が吸っていた古き良き時代でした。

 ところが1970年代に入ってから、ガスライターの使い捨ての100円ライターなるものが登場したのです。これは非常に便利であり、湿気にも強く、時には栓抜きの代わりにもなるし、マッチの何倍も寿命があったので、たちまちマッチを場外に押しやったかっこうになりました。ただ爪楊枝の代わりにはなりませんでした。しかしこの100円ライターは、途中でなくしたり、誰かに貸したらそのまま返ってこなかったりして、最後まで使い切ったことがありませんでした。そこでどれくらいの寿命が、あるのかに挑戦してみたのです。条件は、ガスの量を一定にするためにガス調整の目盛を中央に合わせました。さらにタバコを吸う時の時間を、観察して見積もりました。着火してその炎を確認し、タバコに近づけて吸い込んで着火したことを確認し、ライターの火を消すまでの時間はほぼ2秒でした。このために、着火時間を2秒にしました。実験は実際にタバコに火を点けたら大変なので、着火確認だけをすることにして、連続的にその回数を計測していきました。

 

実験したその回数は630回で、毎日1箱1カ月分

 その着火可能回数は、630回でした。バラツキを確認するために数個やろう試みましたが、指がまったく動かなくなり、友人に頼みましたがバカバカしいということで相手にしてもらえませんでした。結局1回の実験でしたが、非常に興味ある数字になりました。

 この着火可能回数の設定を推定してみますと、次のようなことが考えられます。100円ライターはマッチの20倍の値段がしたので、最低20本×20=400回の着火回数を設定したとみられます。さらにメリットを出すためと、バラツキがあっても最低400回の着火回数を確保したかったと想像されます。実際には、630÷400=1.58≒1.6倍の寿命がありました。使ってみた体験でも、ほぼ1日に1箱が普通であったので、大体100円ライターが1ヶ月に1個なくなる非常によい630÷20=31日間でした。時にイライラがあると増えましたが、体験的にも自販機で朝購入して、ちょうど1日でなくなっていました。それとは別に、毎日パイプタバコを吸っていましたので、これはマッチの方が便利でした。ライターはパイプの中のタバコに着火する時に炎を下に向けるため、非常にやりづらかったので着火方法はマッチでした。あとで横から炎が出るライターも発売されましたが、やはりパイプにはマッチがマッチしていました。

 自宅から会社まで25kmほどあり、車に乗ってからパイプにタバコを詰めて着火して吸い始めて発車すると、ちょうど会社の駐車場まで到着する35分で消えるタイミングになっていました。毎日往復するたびに吸っていたので、まるで体内時計のようにパイプをくゆらす時間も同期化していたようです。ただし、数回に一回はパイプのタールを取るための清掃作業が必要でしたが、これも手間を掛けてゆっくりと時間を過ごす楽しみでした。また車の清掃は、普通は外側からの洗車ですが、パイプのニコチンとタールで黄色に変色しておりニオイもきつく、清掃が大変でした。

 

ライターの寿命を2倍、3倍にする方法は?

 ライターの寿命を簡単に長寿命化することができますが、皆さんはどう考えますか?ガスの容量を増やす?何もしないでやり方を変えるだけすぐにできます。それは、虫の眼で細かく観察することにヒントがあります。実験の時に、2秒という設定をしました。普段風が強い時はライターとタバコを極限まで近づけます。そうです!。タバコにライターを接近させて着火したらすぐに吸い込み、すぐに炎を消すのです。そうすれば一気に寿命を延ばすというか、着火回数を一気に増やせます。

 この一連の動作を確認してみますと、①着火したことを確認する、②タバコに近づけ火をつける、③タバコから炎が見える位置まで離す、④その後消すためにレバーを離す動作をしています。一連の動作にムダがあります。タバコに近づけ一気に吸い上げて、すぐにレバーを上げて炎を消せばよいのです。1秒にすれば2倍になります。0.7秒だと3倍の回数が着火できます。先に述べた前提条件を少し見直すことで、結果は何倍も違ってきます。さらに最初から炎の調整ネジを最小にしておけば、ガスの噴出量も少なくなって寿命も長くなります。ヤスリの付いた石(火打石)の寿命は、ガス以上にありますので心配しなくてもよいでしょう。このようにズームインして動作をよく観察することで、見えなかったことが見えるようになり、思わぬ好結果を発見することができます。

 

 

図1 100円ライターは、マッチよりもはるかに着火回数が多い。

図2 前提条件を変えると、結果が大きく変わることがある。