完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第9回)

渡り鳥は地図がなくても間違いなく移動できる

 遠くの見知らぬ場所に行くには、地図やカーナビが必要

 有名な作家は未だに原稿用紙に向かって、鉛筆やサインペン、さらに万年筆という筆記用具でコツコツと書いているようです。多くの作家は、やはりパソコンに向かっての入力作業になっています。ですから“文章を書く”という作業ではなく、パソコンで“文章を入力する”という作業形態になっています。

 文章を入力するのに漢字変換機能が付いているので、楽々と漢字を入力することができます。時にはビックリするような漢字が変換されることもあるので、それを楽しむこともできます。その素晴らしい変換機能についつい甘えてしまい、段々と漢字が書けなくなっています。昔はきちんとしかも楽々書けたのに、いくら考えてもその漢字が思い出せなくなっております。漢字の変換機能が非常に便利になり過ぎたので、漢字そのものを考えなくなってしまうようになっています。歳のせいもあるかもしれませんが、「漢字が書ける」という機能が完全に低下してしまったようです。

 筆者は陸の孤島といわれる鳥取県に在住しています。仕事となると、いったん鳥取から東京を経由して国内や海外の各地に移動します。東京に着いてから地下鉄の移動があると、非常に苦労をする羽目になります。田舎から出てくるので、人ごみの中をくぐる抜けること自体で疲れてしまい、頭も混乱してしまいます。そして地下鉄の駅の出口がいくつもあり、一つ間違っただけでまったく別の景観が現れるともうギブアップです。事前に地図を準備しますが、それでも角を曲がったり、大きな建物があると先が見えなくなり、実際の現場と簡略し過ぎた地図もあります。その時には辛くても飛び切りの笑顔で、見知らぬ人に道を訊ねることにしています。ほとんどの人が丁寧に教えてくださいますので、世の中まだ捨てたものではないようです。

 新たに遠くの目的地に移動する時は、地図をコピーして持参します。車の場合は、装着してあるカーナビに行き先を入力します。ルートも多くの中から選定することもできます。以前は車には必ず分厚い地図を持参していましたが、今はカーナビだけで間に合います。最短のルートや事故情報だけでなく、ホテルやレストランなどの情報も満載で、しかもテレビまで映ります。こうなると便利過ぎて漢字が書けなくなるのと同じで地図が読めなくなり、行き先を探すことができなくなるかもしれません。

 

渡り鳥は、目的地に確実に移動できる機能がある

 渡り鳥のアジサシは、一年の内に北極圏と南極圏を繁殖のために往復しています。その距離はなんと2万km以上です。大きさはカモメと同じですが、抜群の飛行距離を持つ長距離選手です。大海原では太陽だけで方向を探るしかありませんが、アジサシなどの渡り鳥は、体の中にコンパスを持っているようで、間違いなくはるか遠くの目的地に到達できる機能を備えています。その機能を少し分けて欲しいくらい羨ましいです。この体内にあるだろうと思われるコンパスは、地球の磁気を感じ取って位置確認と目的地の方向の軌道修正をしているようですが、詳細を知る機能が逆に欲しいくらいです。

 ツバメも東南アジアなど数千kmの距離を移動していますが、ピンポイントのようにまた同じ軒先に戻り、巣を作るのは奇跡としか言いようがありません。ゴルフで先ず遠くにボールを飛ばすにはドライバーというクラブで叩きますが、グリーンに乗せてからはパターに持ち替えます。筆者にとっては、このパターが曲者で穴の間を何度も行ったり来たりしています。

 ツバメのように日本に帰ってきて、すぐに元の軒先にホールインワンの如く巣に辿りつくことができます。この機能をパターに取り付ければ、スコアを大いに向上させることができて、一気にシングルプレーヤーになれそうです。でもこれを使ってしまうと失敗がないので、逆に面白みがなくなってしまうかもしれません。遊びにはムダな動きや失敗がないと、面白さは半減してしまうようです。

 

鳥の超能力は発明や改善のヒントになる

 人は鳥を見て、空を自由に飛んでみたいという願望から飛行機を発明しました。魚のように海の中を自由に泳いでみたいということから潜水艦を作りました。月に行くぞ!と宣言したら、10年も経たずに月の上に立つことができました。最初は本当にバカバカしい発想や夢物語に過ぎませんが、人の創造したことはほとんど実現化されています。

 有名な格言に“思考は現実化する”があります。何かを発明するには、バカバカしいことを言葉にして言う、落書きを描いてみるなど、まず行動を起こして周囲の人を巻き込んで大きなエネルギーにしていくことで次第に現実になっていくものです。

 私たちの体の中には微弱な電流(100~20マイクロアンペア)が流れており、脳や心臓や筋肉を動かしたり、細胞の新陳代謝を促したりして刺激を与えています。その微弱な電流を利用して、脳の内にマイクロチップになったコンパスを埋めることができると、地図やカーナビなしで移動ができるという夢物語が考えられます。

 数千kmを飛ぶ渡り鳥の体長は、せいぜい20から40cmほどです。その小さな体に、これほどの長距離を飛ぶことができるのは、実に不思議なことです。体が流線型になっていることは外観でもわかりますが、これほどの長距離を飛ぶエネルギーがどこに潜んでいるかを解明できれば、多くの省エネ対策が可能になります。

 またスズメバチが1日に100kmも移動できるスタミナは、どこから来るのかを研究して開発された商品があります。それは脂肪燃焼効果があるというスポーツドリンクで、筆者もスポーツジムで毎度利用しています。発明や改善のヒントは、人類より前から生き続けている彼らから学ぶことができます。

図1 渡り鳥はナビを搭載しているので迷わない。

図2 スズメバチの力を借りて空を飛ぶか?