完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第14回)

あえて手間を掛けてみる

   文章を書くためにどんな文房具をつかっていますか?

 筆者の机の引き出しを開けてみると、2Bの鉛筆、4色ボールペン、4色のサインペン、筆ペン、5色の蛍光ペン、黒と青の万年筆、BとHBと2Bのシャープペンが出てきます。まるで文房具の店のようです。しかし、最近では多くの人が文章やメモを手書きで書くことは少なくなり、パソコンに向かってキーインしてプリンターで印刷をする形態になっています。これにより、綺麗な文字でしかもきちんと配列されていて、読みやすくなっているので読む方としても便利です。

 しかし、ありきたりの定番の文章では見る気がしないものになってしまいます。年賀状も以前は手書きであったものが、パソコンとプリンターによって個性的なものを自ら創り出す喜びがでるようになってきました。でもそれもちょっと眼を通すだけで、何か伝わってくるものは多くはありません。

 やはり手書きのコメントや毛筆で書かれたものは、差し出した人の思いが伝わってくるものです。これは何の違いかと考えてみると、ほんの少しの手間を掛けたかどうかだと言えます。最後のサインだけでも、自筆で書くだけで本人が書いたという証になります。外国では各人が個性的過ぎる文字であり、タイプで打ち込んだ文章に名前も印字して、そこに自筆のサインを入れるのが習慣になっています。

 筆者は日常的にはメールを使っていますが、ここぞという時には手紙を書くようにしています。お礼やご機嫌伺い、そして何かの依頼事には少々面倒でも毛筆で縦書きにして想いをしたためます。毛筆の欠点は普段書いていないので、真っ直ぐに書けないことや失敗すると手直しがきかないことがあります。また、綺麗とは言えない文字であり、丁寧に書くことで、相手が読めればと思って書いています。(判読不明も少々アリと自覚)

 便箋は、個人的に作成してもらったものや鳥取県産の和紙を用います。おっ!これは!?と便箋だけでもちょっとしたサプライズにもなり、あまり出回っていない便箋を使うのがミソです。毛筆だと一度で上手くは書けませんので、以前失敗した便箋を残しておき、それに下書きをして練習します。時にはそれを便箋の下に置いて、なぞって書くこともあります。決して失敗した便箋を丸めてゴミ箱に捨てません。なぜなら丸めてしまうと、A4の用紙だと体積が6ccが一気に150cc位に増えてしまうからです。ゴミ箱がすぐに一杯になります。どうしても悔しさを表現したいのなら、丸めるのではなく、引き裂くことです。悔しければ3回、4回繰り返しますが、体積は不変です。

 

手紙を出す時にもちょっとした手間を掛けてみる

 手紙を書いた後に季節によって少し演出もできます。それは、春や初夏は庭木から若葉を取って手紙に添えます。秋になれば、紅葉の一枚を入れるだけでも様になります。これだけでなく、身の回りのちょっとした写真や絵ハガキを添付するだけも、相手に対しての印象は違ってくるものです。お金を掛けないでも、相手を喜ばす手立てはあるはずです。引き出しの中を虫の眼で探してみると、必ず出てくるものです。荷物には、地元の新聞を添付することも喜ばれます。

 手紙を書いたあとに封をしますが、糊で貼り付ける方法もありますが、これも2つの違った方法を取っています。1つはテープで留める方法ですが、右端の先端を数ミリ折り返します。その部分は封書に付きませんが、これがミソです。そこに赤文字で矢印と共に「ここからはがします」と書き添えます。剥す時には、その数ミリ浮いた部分を引っ張れば一気に剥せます。ハサミもカッターも不要です。中身が重い場合は封の部分が剥がれる恐れはありますが、左側を住所のある方に2センチでも折り返すと剥がれる心配はなくなります。

 もう1つは、ロウで封印して文字を刻印する方法です。欧米で良く用いられる方法ですが、糊付けして封をした後に、金色や赤色の専用のロウソクを垂らして、ハンコで刻印するものです。会社用「M」と個人用「R」の2種類を用意して使い分けています。これを普段から使っている人は極僅かですので、この手紙をもらった人は大抵驚くものです。友人もこれを使っており、契約の成功率は非常に高いと評価しています。このひと手間が相手の心に響くのです。

 当然差し出す時の切手は、記念切手を多用しています。特に請求書を出す時には、普通の切手よりも珍しい切手だということだけでも相手の気分は違うはずです。知人の会社もこの方法を採用しています。郵便局に記念切手がある時には、確保してもらうように話しかけて置くだけで良いのです。貼る時の楽しみもあります。いつも数十種類の切手を準備しています。逆に受け取った記念切手は大切に保管して寄付をしています。こうすることで切手は一回の命ではなく、また新たな命が吹きこまれます。

 

そしてポストに投函ではなく、郵便局で差し出す

 完成した手紙は、重量確認を一応ポストスケールという分銅を利用した測りで確認して切手を貼り付けます。しかし微妙な時もあり、近くの郵便局に持っていき確認してもらいます。ポストに投函しても良いですが、あえて郵便局に出掛けて世間話しでもしながら料金確認をしてもらうことで、地域のコミュニケーションが簡単にできます。

 郵便局は地域の情報が一杯あるコミュニケーションスポットであり、双方向の情報交換もできます。この時に筆者が発行している機関紙や音楽祭のパンフレットも紹介できます。時にはムダや5Sの話にも発展することもあります。ほとんどは県外や海外に出ているので、地元のことが分からない浦島太郎的になることもあり、色々な人とちょっと立ち話をするだけでも違ってきます。知らん顔ではなく、こちらから大きな声で挨拶をすることで会話ができ、そして相手は心を開き始めます。

 

 

図1 手紙の封の仕方:テープ編

図2 手紙の封の仕方:ロウソク編。