完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第15回)

酸性かアルカリ性かリトマス試験紙

   台所にリトマス試験紙を置いて色々と観察してみる

 30年以上も前から我が家の台所には、筆者の趣味でリトマス試験紙(ロールタイプ)が置いてあり、気になった食材や飲み物が酸性かアルカリ性かを調べています。これは非常に簡単に計測できるので便利です。pH(ペーハー)測定器は、現在1万円ほどで購入できます。このリトマス試験紙は当時でも数百円で簡単に入手できました。しかも必要なだけ取り出して水溶液に漬ければすぐに結果も出せるので、子どもたちと一緒に化学実験のように遊びも兼ねて使っていました。

 近年では新しい飲料水が発売されると、リトマス試験紙に漬けて反応を見て、酸性かアルカリ性かと試しています。今ではインターネットで調べるとすぐに検索できますが、単なる知識を知ることに加えて実際にやってみることは大切なことです。実際に自分で調べることで、気づきが生まれることは多々あります。人から聞いた話や本で読んで知ったことは、経験知にはなります。でも自分で調べたことや実際に体験したことは、体験知となります。その差は雲泥の違いがあると考えます。

 なぜこの試験紙を「リトマス」と呼ぶのかといえば、今から700年も前にスペインの化学者が、リトマスゴケの成分をろ紙に染み込ませ、酸性かアルカリ性かを判定できるようにして、そのコケの名前が由来になりました。多分ワインを作る時のブドウの栽培に土の何かが影響していると考え、色々と試したと想像できます。著者はスペインのリヨハのワインが大好きなので、短絡的に想像しました。ブドウの栽培には、pH6から7、稲やリンゴは5から6、梨や桃は6から7.5とそれぞれの植物に好みがあり、それに対応するように土壌改良して、少しでも多く収穫しようと試みたことが分かります。

 酸はラテン語の「酸っぱい」という意味から、アルカリはアラビア語の「植物の灰」に由来すると知ってビックリしました。薪の灰は、筆者が子どもの頃には、特に風呂で燃えた後の灰をキチンと素焼きの壺に保管するのが役目になっていました。これは畑の土壌を中性に戻すために撒いたり、台所では灰をワラに付けて洗剤の代わりに代用していました。日本人の先人も生活の知恵を持っていたのですね。日本では台所の食器や野菜の洗剤は、1956年に発売されました。鳥取の田舎では相当後になってから使うようになりましたが、当時の洗剤は粉タイプで紙製の筒の容器でした。

 

コーラは洗剤にもなり、頑固な錆を落とします

 酸とアルカリは、0から14段階に区分されて、中性は真ん中の7で、0から7まで領域が酸性、7から14までがアルカリ性になります。現在使っているリトマス試験紙は、強酸の1から強アルカリの14まで判定できるものです。賞味期限はあるようですが、シビアに調べる訳ではないのでまったく気になりません。梅雨の頃になると代名詞のように言われる紫陽花の花は、酸性ならば赤、アルカリ性ならば青、中性ならば白になると言われています。でも近所の紫陽花公園では同じ木でも違う色が混在しており、土壌の酸性やアルカリ性を判定するのは怪しい気がします。

 レモンが酸っぱいことは誰もが知っていることですが、そのpHはほとんどの人が知らないものです。多くの食品の中で酸性が強く、胃酸と同等の2です。柑橘系の果物は3前後の値です。面白いことにレモンの古い名称は「枸櫞(クエン)」と書き、クエン酸の由来になっています。これと同様で強い酸性なのが、飲み物のコーラです。飲めばスカッとしますが、コーラの以外な効用として、頑固な錆を落とすことに非常に効果がありますので、是非残ったコーラでお試しください。その他臭い消しや汚れ落としにも応用できます。酸性の液体ということを知っておけば応用が利きます。ワイン、ビール、日本酒も2から4の強い酸性です。逆に最近無意識に嗜むようになった焼酎は、なんと8のアルカリ飲料でした。これを言い訳に飲む量が増えそうです。

 このpH値は、1つ違うだけで大きな違いはないように感じますが、実は対数のLOG値になっており、3つ違うと1000倍の差になります。これは水溶液の中の水素イオンの濃度を表現しています。それをリトマス試験紙は簡単に色で判定ができるので非常に便利です。生産現場も視認性が良くなるのが、色→形状→数値→文字の順番であり、これらの組合せにより目で見る管理への応用ができればと思います。

 

自分で測るから、気づきが生まれる

 リトマス試験紙が台所に置いてあるので、新しい食材や飲料水があると、すぐに測定ができ、酸性かアルカリ性かはたまた中性かと判定結果が分かります。これはすぐに結果が分かるので食材への興味も湧いてきます。またこの食材と混ぜると、どんな味になるかと新たな興味も湧いてきます。小さな試験紙ですが、楽しみ方はどんどん広がります。そのお蔭で?自分で料理することが楽しみになってきています。

 少し血圧が高かったので、毎日血圧測定をして記録しています。食事療法と軽い運動の併用で、この一年間で数kgの減量ができ、それと連動して血圧も正常値になってきました。血圧測定を記録する手帳には、表紙に「自分で測る、自分で気づく」と副題がありましたが、なるほどその通りだと思いました。「目で見る管理」も同じことであり、見えないからどうしてよいか判断できませんが、見えるようになると変わるものです。

 そこで何かの方法で見えるように置き換えます。これが「測る」ことになります。「測る」ことで数値化できたり、色で認識できたりして、「分かる」ようになっていきます。「分かる」ようになれば、次はどういった策を取れば思い通りになるか(良い方向、あるべき姿)の検討が閃くようになります。さらにもっと効率良く、もっと応用ができないかと発展して考えることが、自分で測ることで新たな気づきが生まれるようです。

図1 リトマス試験紙は、簡単で便利な測定方法。

図2 コーラは強力な錆を落とす洗剤でもある。