完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第18回)

数の数え方あれこれ

 片手でいくつまで数えることができますか?

  片手で指を折りながら、いくつまで数えることができますか?日本の大抵の人は、折り紙のように指を折りたたむことが自然にできるようです。このために親指から折りたたんでいき、そして今度は小指から開いて10まで数えます。場合によっては、人差し指から開いて5は親指を出して、6からは折りたたんでじゃんけんのグーの状態で10と数えることもあります。手話では、指の第一関節と第二関節を同時に折り曲げたりしてちょっと複雑になりますが、片手でなんと1から1万までも表現できます。

 欧州で片手でいくつまで数えることができるかと訊ねてみると、全員が「5」までだと言って、親指から順番に開いてじゃんけんのパーの状態で「5」を表現します。そこで「6」を片手で表現するとどうするかと、投げかけると途端に頭を抱えてしまいます。片手で「6」を数える習慣がないことが分かります。そして、最初にパーを出してから、親指を出して「6」になったというので、それなら「11」はどうかとまた投げ掛けると、パーを2回出して親指を出すのです。「21」になると、大変だねえとやり返します。

 ロシアやバルト三国の地方では、手を開いてから、「1」は最初に小指を折りたたみ、「2」はさらに薬指を折りたたんで順に中指、人差し指、そして最後に親指をたたんで「5」と数えます。彼らも「6」は表現できません。アフリカでは、1、2、3、そしてたくさんということ聞いたことがあります。つまり欧州やアフリカでは狩猟文化だったので、必要な分だけの獣を収穫したらそれでお腹も満たされるので、多くの数を数える必要がなかったと考えられます。また昔は冷蔵庫もなく保管ができなかったので、それこそJIT(必要な時に、必要なモノを、必要な量だけ)の精神があったのでしょう。

 逆に日本や中国や台湾などでは、「10」まで数える習慣があり、アジアの農耕文化圏の影響で数を多く必要としたと想像されます。先ほどの「6」を片手である方法で表現すると、人差し指と中指の2本の指を立てることで出来ます。つまり、写真のポーズに良く出てくる「ピース」サインです。「11」は、薬指と人差し指と親指を立てることで表現できます。なんとこの方法ですと、片手だけで「32」まで数えることができ、両手だと「1024」まで数えることができます。その指が立ててあるか、折りたたんでいるかの状態を見ればすぐに数えることができます。ピンと来た人は、これは2進法だと気づかれたと思います。2の5乗=32ということです。因みに2の10乗=1024です。

 

4進法、5進法、12進法、16進法、60進法もあります

 この2進法は、45年くらい前に先輩から教えてもらい、いつも指の運動として今でも練習をしています。1度両手を使って「1024」までカウントしたことがありますが、その日の内に腱鞘炎になりましたので、こんなアホなことはもうできません。でも2進法で、「32」まで数えることが出来ることが分かれば、発想の転換ができます。原理原則が分かった人は、わずか2分で「32」まで数えることができました。普通の人では大体1時間を要しますが、これで頭の固い人と柔らかい人を判定することも可能です。

 今まで「5」とか「10」までしか使えなかったものが、開いたり折りたたんだりした単純な動きに、少し組合せを変えると一気に3倍、6倍にもなるのです。今ある資源の使い方を変えることで、一気に何倍にもなる事例に良く使っています。2進法は、17世紀のドイツの数学者ライプニッツが考えたものです。この応用が、0101010・・・の組合せ、つまりスイッチのオン、オフの組合せであり、コンピューターの原理になっています。

 人は昔から数を数える身近な手段として、5本の指を使ってきました。これはいわば5進法になり、また1から5の繰り返しになり桁上げしていきます。両手を使うと10進法になり、10進法は私たちの日常の計算には非常に便利です。足の指を加えると、20本になります。両手両足の指を使えば、20進法になります。

 普段の日常生活にはお馴染みではありませんが、コンピューターのプログラミングには、10進法よりも2進法を組み合わせた16進法が使われています。これは、0~9の数とAからFまでのアルファベットの6つを組み合わせて用いられるものです。16の0乗=1、16の1乗=16、16の2乗=256、、、となります。逆に日常生活に欠かせないのが、12進法と60進法です。つまり時間管理は、この2つの数え方の組合せです。1分が60秒、60分が1時間、12時間が半日で、1日が24時間になっています。江戸時代の1両は、4分で、4分=16朱=4000文という4進法になっていました。

 

円の角度は、365日が基本になっている

 時間の基になっているのが、古代バビロニア(現在のイラクあたり、紀元前2000年前ごろ)です。暦の元を考え月の満ち欠けを基に、1年を12か月として割出たようです。当時は太陽が地球を回っていると考え、ぐるっと太陽が地球の周りをまわって、季節が元に戻る日を365日と数えて、1年の日数を決めたことが分かります。

 このぐるっと円を描くことで、円の角度を1年の日の数の365度と設定したものです。しかし中国では囲碁の升目の19本×19本=361を、円の角度としたこともあったと記されています。真四角の碁盤にも一年や円の考え方が、入っていることに気づかされます。ところが365や361は、何かと計算をするにも角度を測るにも面倒なので、5、12,20,60といった数値で割り切れる360度にしたことは納得できます。4000年の長きにわたり使いこなされて、トゲがなくなり丸くなって定着したようです。

 干支の十二支も12進法であり、1年の12か月を基にしたことが分かります。12か月と指の5本で、60を導き出したことが時間の基になったことも想像できます。お金の計算などは10進法で、時間管理は12と60進法の組合せで生活をしています。

図1 指で2進法を使って6や11を表す

図2 両手でやると、この形だと数値は561となります