完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第28回)

同じものを集めるとまた見えてくる

卵の殻を取り出すには、卵の殻を使うと簡単です 

 玉子料理をする時に、卵を割ると小さな殻が白身のなかに入ってしまうことがあります。それを取る時に、指で取ろうとしても卵の殻は逃げてしまいます。ところが割った卵の殻の一部を白身に差し込み、混入した小さな殻の破片を探るとすぐに捕まえることができます。不思議なことに、いとも簡単に破片を除去できます。

 ちなみに「たまご」の表現ですが、料理する前は「卵」で、料理をすると「玉子」となります。つまり、「なまたまご」は「生卵」になり、「あつやきたまご」は「厚焼き玉子」になるそうですが、ついつい知らない間に間違って使っていました。

 机や作業台の下のホコリが溜まってきて、タマゴのように丸くなっている現象はありませんか?ドイツでは、この状態を「ウールネズミ」と言います。それを取ろうとすると、わずかな動きでも風圧が発生して、そのホコリの玉は逃げてしまい、まるでネズミのような動きをします。追いかけている内に、だんだんと大きくなっていきます。その場合は、追いかけずに掃除機で吸い込んだ方が得策です。

 この「ウールネズミ」の現象は、乾燥機の糸くずを回収する時に、糸くずの破片をちょっと摘まんでからスクイズすると、いとも簡単に集めることができること同じです。また庭の枯葉を集める時に、竹ボウキや竹製の熊手でかき集めると簡単にできます。でも金属製や樹脂製のホウキや熊手は、少し手間がかかります。類は友を呼ぶという表現がいいのかわかりませんが、同じもの同士の方がかき集めやすいようです。

 

道具を集めた七つ道具は、実にたくさんあります

  かき集めるという道具で、熊手をすぐに連想しました。この熊手を使ってかき集めようと考えたら、次にピンと来たのが「弁慶の七つ道具」でした。熊手、木槌、ナギナタ、大太刀などがあります。特に先端がU字になって長い柄の付いた道具は、刺股(さしまた)といい犯人などの首や手足を、壁や地面に押し付けて捉える道具です。これはどこかで見たようなマークだったことを思い出し、学生時代の地図帳を引っ張り出しました。地図のマークにあったのは、「消防署」のものでした。ちなみに警察は〇のなかに×、学校は「文」というマークでしたが皆さんは思い出せましたか?

 弁慶は力持ちだったようで、これを背負子と呼ばれる竹製の籠にいつも背負っていました。今でいうリュックサックのようなものです。このように、1つのカゴやバックに仕事で使う道具をかき集め、それを持って移動すれば、その場で道具を探すことなく仕事ができ、素早く作業ができるようになります。代表的なのは、大具さんの道具箱で、これも大工の七つ道具と称されます。実際には、もっとたくさんの道具や工具が入っています。この七つ道具と称するものはたくさんあります。古くは大名行列の七つ道具、武士の七つ道具などがあり、最近では選挙の七つ道具、探偵の七つ道具、QCの七つ道具、アンコウの七つ道具(これは良き酒の友として、欠かすことのできないアイテム)、さらにはサッカーの審判の七つ道具というものもあります。

 身近なところでは、ゴルフバック、非常用防災袋、化粧ポーチ(今や女性だけでなく男性も使っています)、プラスやマイナスなど色々なサイズのビットの入っているドライバーセット、ナイフや栓抜きなどが1つに揃ったアーミーナイフ、お医者さんの診察鞄、大工さんが腰に巻いている前掛け(ドンブリと言います)などが思い浮かびます。

 なぜこのような道具箱を携帯するのでしょうか?IE的に作業を観察しますと、一連の作業で道具、工具、部品、部品、書類などモノ探しに占める時間の割合は、最低でも3割もあります。5S活動や改善の遅れている現場では、9割の時間がモノ探しだったという観察結果もあります。これらを1つの箱や袋に入れておけば、これらを探す手間が一気になくなります。

 電気工事の人たちが、腰回りに取り付けている工具入れの腰ベルトには、ドライバー、ニッパ、ペンチなどの工具をセットしています。電柱に登ってから工具を忘れたので、地上まで取りに行くというムダな作業は、プロとして絶対にできません。

 

この七つ道具の考えを、現場改善に使ってみましょう

 筆者が工場で改善をしていた時には、他の人たちと比べ改善のスピードが2倍以上もできていました。実は、この腰ベルトを付けて現場改善をしていたからです。たったこれだけで工具探しがなくなり、素早く改善に取り掛かることができました。

 さらに改善専用の鞄の用意、さらに予め使用する5cm単位にカットしたLアングルをサイズごとにセット化しておき、台車に載せておきます。ラインテープも各種取り揃えて専用の箱にセットしておくことで、即改善実施ができるように外段取り化を進めてきました。さらにネジのサイズをできるだけ共通化して、工具も減らす工夫も導入すると、探す、迷う、悩むというムダな時間をなくすことができ、付加価値を生む時間を大幅に生みだすことが可能になります。さらに市販の工具を少し加工して、自分なりに使いやすし、道具化することも作業効率やスピードを一気に上げることができます。道具化とは、工具を改造してさらに使いやすくしたものを言います。

 お金を掛けないように、工場をくまなく一斉に道具や工具を全員が熊手となって使えるものをかき集めます。そして使えないものは廃棄し、修理できるものは手直しし、必要な個所に必要なだけ配布しておきます。余ったものは倉庫などにきちんと保管して、新規のものを買わないようにします。それだけもびっくりする金額になります。

 さらには、改善する色々なグッズを取り揃えた改善台車、道具や工具をセットにした台車やオカモチも今ある台車などを、少し改造するだけで準備できます。

図1 まず集めてから七つに絞る

図2 集めてセット化して探すムダをなくす