完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第33回)

虹の色が7色に見えますか?

虹の色は各国によって違って見えるのです

 虹の色だと言えば、私たち日本人はすぐに7色を連想します。その7色は、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫です。でもドイツ人に聞いてみると、赤・緑・青・紫の4色だと答えるのでびっくりしました。可笑しいと思って調べてみることにしました。

 英国だと、基本色として赤・黄・緑・青・紫の5色だそうです。さらに米国だと、赤・橙・黄・緑・青・紫の6色に見えるというのです。その他には、3色だとか極端な地域では2色にしか見えないというのですから、「色々」とはこの虹のようであるようです。沖縄では大雨のあとは、空の青さのせいで赤と黄しか見えないこともあるようです。

 眼の色が違うから、同じ虹を見てもそれぞれの色の分解能力が違うのかもしれません。日本人の瞳の色は、黒か茶色がほとんどです。外国では青、灰色、緑など色々見られますが、まさかこの瞳の色に違いにより、虹の色の移り変わりの能力に影響しているとは思えませんが謎です。

 ちなみに太陽の色を画用紙に子どもたちに描いてもらうと、日本は赤で他の国は黄色になります。太陽が赤というのは、日本だけの特別な見方のようです。なぜか?弁当に真っ赤な梅干しを入れて「日の丸弁当」という伝統からか?それとも世界で最も早く朝日が拝めるのが日本であり、昔から夜明け前に外に出て日の出に手を合わせて拝んでいた印象からも想像できます。夜明けや夕焼けの太陽の赤が、日本人に染み透ったかもしれません。

 筆者の好きな色は、夕焼けの茜色と春の芽吹きのころの萌木色です。両者も刻々と移り変わっている様がとても楽しく、しかも美しさがあります。特に茜色は、数十秒もするとグラディエーションが違ってきますので、うかうかしておれません。桜の花のように、パッと咲いてパッと散る様に趣きを特に感じるのは筆者だけではないと思います。

 ところが筆者が住んでいる山陰地区の象徴的な色と言えば、なんと冬の空に象徴される灰色と秋の枯葉の黄土色であり、その認識レベルが全国でも突出していると聞いたことがあります。たしかに「弁当は忘れても傘は忘れるな」という言い伝えもあるほどです。天気が良くてもいつ雨が降るかわからないので、特に雲の色から雨が降るか降らないかが大きな関心事になっていたことを裏付けるものであり納得します。

 エスキモーの人たちは、一面氷と雪に覆われているため「白」という色に非常に敏感だそうです。彼らは「白」といっても数十も区分しているそうです。色の感じ方というのは、生活に密着しているようです。また日本では、緑色だけでも若草色、鶯色、抹茶色、青竹色など数十種あり、色に関した呼び名は数百もあり、日本という素敵な環境にいることに感謝したいものです。

 

プリズムで太陽光線を分析してみました

 人工的に簡単に虹を作る方法にプリズムがあり、小さなものを早速入手しました。送られてきた箱には「三稜鏡」と表記がありましたが、現物を手にすると良く「三稜鏡」と翻訳したなあと感心しました。太陽光をプリズムに当てて屈折して発生するスペクトル(配置)を確認すると、入射と反対に映し出された2つの面から虹を綺麗に壁に映し出すことができました。

 虹は普通雨上がりに観察できる配置が、下から紫・青と続き上つまり外側が赤になります。しかしもう1つの虹は、上下の色の配置がまったく逆になります。しかもパッとみると色は7色ではなく、赤・緑・青・紫の4色に見えます。橙・黄・藍の3色は非常に光の幅が小さく区別が難しい状態でした。

 普段私たちが観察できる虹は、下に紫があり上には赤のある主虹といい、外側に少し離れた位置に見えるのが副虹になりますが、副虹はあまり見ることができません。というより気にしていない方が多いと思います。2つも虹が出たと、今日はラッキーと思う程度で、副虹の色の配置が主虹と逆になっているとは気づかないものです。見る時にもう少し観察というレベルで見ていくと、気づきが生まれます。

 虹(光学)を研究対象にしたのが、あのアイザック・ニュートンであり約300年前のことでした。やはりプリズムを用いてスペクトルを観察して、今までの概念であった5色に橙と藍を加えて、7色にしたのです。さらに彼は、光は7色ではなく連続的に色があることも気づいていました。7色にしたのは、音階のドレミファソラシドの7音階にありそれに合わせたようで、リンゴだけでなく虹にも関心があったようで意外な一面を覗くことができました。

 

虹の両外側には赤外線、そして紫外線があります

 私たちが光を見て色として感じられるのは、可視光線というごくわずかなスペクトルの領域の一部に過ぎません。紫は380nm(ナノメートル:10億分の1m)、赤は780nmで、中間の550nmが緑になります。

 例えばミツバチは、人間より短い波長の紫外線300nmが見えるので、太陽に雲が掛かっていても紫外線で自分の位置を確認し移動できます。逆にマムシは、頭部に赤外線を感じるセンサーを持っており、真っ暗でも小動物の体温を検知できる凄いハンターになれるのです。

 1800年に英国の天文学者が、プリズムで太陽光を分光していた時に赤色の先に温度計を置いていたところ、温度が上昇したことに気づき、見えないけど暖かい光線が出ていると考え赤外線を発見したといいます。

 現象に対して、可笑しいなあ?なぜだろう?と気づくことにコストはかかりません。世の中の発見の多くは、このような身の回りの少しの変化に疑問をもつこと、少し好奇心をもってもう一歩踏み込んで観察することで、大きな発見やヒントが見つかるものです。リンゴが自然落下した現象を見て、ニュートンは万有引力を発見しました。自然界をじっくり観察して、発見や疑問そして感動を生みだすことができるのは人間だけです。身の回りをちょっと意識して観察してみましょう。お宝が発見できますよ!

図1 雨粒がプリズムになり虹ができます

図2 虹という字は空をつらぬく大蛇の一種とみられた