完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第37回)

眼だけではなく、全身を使って感じてみましょう

耳だけでなく、心や体でも音を感じてみましょう

 乾杯の時にグラスをお互いに当てますが、その意味はご存知ですか?ほとんどの人は考えたことがないようです。そこで、2つの答えを紹介します。1つは、グラスの中に悪魔がいるのでそれを追い出すためです。これは欧州人に教えてもらいました。もう1つの答えは、食事の時に見る、味わう、匂いを嗅ぐ、触るがあるが、あと足りないとして音がないことに気づき、グラスを当てて音を出して五感を使うというものでした。本当はどうかはわかりませんが、食事にはユーモアも必要だったのでしょう。

 人の持つ五感の内の聴覚ですが、人が聴き取れる音の周波数は、20から20万Hzの範囲と言われています。音階のドレミファソラシという音階の周波数は、260から493Hzの領域で周波数の比較的低い範囲です。音波は空中では、340m/秒で伝わりますが、海中だと1500m/秒と4倍以上も速く伝わります。クジラには、耳は目の後ろにあるらしいのですが、穴がふさがっており機能はしていないのです。顎の下の脂肪で、感じ取っていると考えられています。

 耳で聞こえない高周波でも、人は耳以外で感じ取ることができるのです。伊勢神宮の20年に一度行われる式年遷宮を撮影した、映画「うみやまあひだ」(海と山の間の国を意味する)を観て感動しました。1300年前から神聖な場所を、オシロスコープもない時代にこの場所を発見し、この神聖な行事を継続しています。本当に昔の人の感性は凄いと思います。

 それは森林や川というより、社全体から発せられるものです。伊勢神宮の辺りでは、70万から100万Hzの高周波が出ているというのです。一見シーンとしている森林ですが、実は鳥や虫、水の流れる音や植物の葉っぱのすれ合う音などが、ざわざわというか表現できないけど騒々しい音が出ているのです。もっとも騒がしい場所とは、熱帯雨林であり70dbの騒音が観測されるといいます。都会で言えば渋谷の交差点の騒音レベルと同じですが、騒音とは別の環境音の静寂感を感じます。ちなみに漫画で何も聞こえない状態を表現するのに「シーン」と描いたのは、あの手塚治虫氏でした。

 耳では聞こえないのですが、神社仏閣やその周囲の社に行き、その場にしばらくいると清々しい気持ちになったり、心を洗われる気分になれます。この高周波発見者の脳科学者の大橋力氏は、この高周波を豊富に含んだ音に接すると脳が活性化することも突き止められました。

 

触れるとは、虫の眼でみることです

 現代病と言われる癌、高血圧、糖尿病、アトピー、うつ病などは、食生活の変化や脳の深い部分の活力が低下していることが要因なっているようです。これらは薬物療法で、改善できるものではありません。生きていることに感謝しながら、薬物によって汚染されたものではなく自然に近いものの命を戴き、そして自然の環境に身を置いて、身も心も浄化することの大切さを教えられます。

 “食事”とは、人が良くなる事と書くことができますが、分解してみると面白い気づきが発見できます。“触れる”という字は、つくりが“虫”になっています。角の先を使って、虫の眼で詳細に観察すると捉えても良いかもしれません。実際に触ってみるには、指を多く使います。しかも指の腹であり、手の甲の方ではありません。金型の研磨作業の職人と呼ばれる人は、この指で触ってミクロンオーダーの凸凹を察知すると言われますが、まさに超々敏感センサーになっています。

 指を触れるだけで、表面粗さや熱い冷たいといった温度、さらには湿気も感じ取れます。またプルプル感やベトベト感といった感触も、感じ取ることができます。さらに持ち上げてみると重量も感じ取れます。箱など筐体であれば、ちょっと振ってみると中にどれくらいのものが入っているかも容易にわかります。

 臭いは、臭覚器官である鼻が感じ取ります。工場内でも焦げ臭いとか、薬品の臭いというレベルなら十分に感じ取れます。犬のような臭覚を持つことはできませんが、いつもとニオイが違わないかと意識してみることでも気づきが生まれます。

 味覚は舌ですが、工場内の材料や機器を舐めるわけにはいきませんが、視角や触覚と合わせて味わうように観察することはできます。表面の汚れ具合や錆の発生具合、経年劣化などを想像しながら、まだ美味しく味わって(寿命はまだあるかな?)みませんか。味わうは、その職場の雰囲気を感じ取ると考えましょう。

 

五感だけでなく、第六感も使ってみましょう

 第六感とは、五感以外のもので五感を超えるものを指しており、理屈では説明しがたい、鋭くものごとの本質をつかむ心の働きのことであると称されています。誰もが持っているようには思えませんが、見方をちょっと変えると私たちはその力を持っていることに気づきます。

 それは、「目的は何か?」という疑問をいつも持つことで、養われると考えます。毎日の仕事や家事に追われていると、目先のことしか考えなくなり、視野が狭くなってしまうものです。硬直状態になり、せっかく持っている五感のセンサーも鈍くなってしまうものです。そのためには、心と脳に余裕を持たせることが大切です。

 筆者のやり方は、「目的は何か?」を考える時に合わせ深呼吸することにしています。できるだけゆっくり鼻から腹式呼吸で大きく息を吸います(4~10秒)。そして重要なのが脳に酸素を送るために、いったん呼吸を止めることです。これも同じ時間です。そして、ゆっくり時間を掛けて息を吐き出します。これを3回繰り返します。そうすると頭も神経もすっきりして、潜在意識が次第に目覚め始め、ハッとするような第六感が働くようになります。あとは、まめにメモを取ることです。

図1 神社にはやはり見えないパワーがあったのです

図2 深呼吸して脳に酸素を送って見えない力を発揮させよう