完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第38回)

草食動物と肉食動物では眼の位置は違います

草食動物の眼は、敵を発見するために頭部の横にあります

 皆さんは動物を自宅で飼っておられますか?最近ではイヌとネコの比率が逆転して、ネコを飼う家庭が増えたといわれています。筆者は、最近まで自宅でウサギを3世代にわたり合計17年間飼っていました。

 ウサギは、イヌやネコとは違い、大人しくて吠えることはありません。また草食なので餌代も掛からず、野菜の余ったものや庭のタンポポなどの草で飼うことができました。抱き上げてマジマジと顔を眺めると、マンガで良くみるウサギの絵と実際のウサギの顔は実は全く違うことがわかります。両目の位置は、ハトと同じように頭部の左右両側にあります。両耳の位置は頭部の上にくっついて描くことが多いのですが、実際には頭部の両側に位置しています。

 草食動物の眼の位置を見てみると、ウシやウマ、ヒツジなどは地面近くの草を主食として食べていますので、前を見るには舌や口の伸びる範囲で十分なので正面になくても良いと思われます。しかもニオイでもわかります。しかし食べることに夢中になっていると、肉食動物から狙われてしまいます。

 そのために周囲を見るために、頭部の両側に眼が進化して移動したと考えられます。休憩している時でも、草むらに隠れ忍びよってくる肉食動物から身を守るために、いつもほぼ360度全方向に注意を払うことになります。そのために個体ではなく、集団になったりして身を守っています。人間の眼の見える範囲は、半分の約180度だけです。しかも年を取ると160度以下になってしまうこともあります。両手を広げて見ると自分でも測ることができます。

 ハトやスズメなどの鳥の草食系の仲間も、両眼は頭部の左右に位置しています。これがフクロウなどの猛禽類の眼は、顔の正面にあります。カラスは、くちばしのすぐ後ろに眼があり、雑食ながら肉食系に近いなあと思います。

 それぞれの動物の特徴を誇張した描き方をすることで、その動物がより一層理解しやすくなります。マンガで描いたイメージは小さい頃からインプットされていますので、逆に子どものころからマンガや絵本で入力されて、固定観念に固まってしまうことがあります。実際のものとの明確な区別が、できなくなることも時々あります。でも間違った情報でも何度でもインプットされると、勘違いもわからなくなることもあり、注意が必要です。

 

肉食動物の眼は、獲物を探すために顔の正面にあります

 肉食動物のライオン、トラ、ヒョウ、イヌなどは、顔の正面に両眼があります。獲物を探すために、どのくらい離れているか遠近感を感知するために眼がくっつく位置になっています。これは三角測量と同じ原理で、2点から1点に焦点を合わせることで、正確な距離を掴むものです。

 さらにヒトの祖先であるサルは、木の上で生活をしていたので時々に地面に降りた時には、その立体感を掴むことが大切な機能なったと考えられます。ちなみに片目をつむり階段を下ってみますと、両目と違い遠近感が掴みにくくなり危ないことが体験できます。ヒトが二足歩行になってからは、両手も自由になり立体的にものを見ることで、道具を作り出すことができたといわれます。

 両眼でものを正確に見ようとすると、視野が狭くなっていきます。両眼で見ることのできる範囲は、草食動物は約30度、肉食動物は約90度、ヒトは約120度といわれます。アジア系の人の顔は、やや平面であり丸顔が多くみられます。アジア系は農耕民族であり、動物で言う草食動物に近いと思います。田植えをしたり、畑を耕作したりする姿勢はまるで草食動物です。そして眼の位置ですが、鼻から少し離れたように見えるのはアジア系の人たちです。

 欧州の人たちの祖先は、狩りをする時は足元を見るのではなく、遠くを眺める立ったままの姿勢になります。ただアジアに比べて気候が寒いために、顔の表面積が大きいと熱を奪われてしまうこともあり、顔が小さい方が便利になり眼の間隔も狭くなったかも知れません。食べ物の他に言語の違いも顔の形に影響するともいわれますが、いずれにしてもその風土に合わせてきたからこそ、今があるのだと思います。

 気づかないところで、自然に対応してきているのでしょう。肉だけや野菜だけという極端な食事を摂取すると、健康に影響してくるものでありやはりバランスが大切です。

 

疲れない作業は、眼球の動きを少なくすることです

 肉食動物のように、いつも真っ直ぐ攻撃的な視線で見るのは疲れてしまうものです。また草食動物のように、周囲を状況にキョロキョロするのも疲れるものです。食事だけではなく、ものの見方や配分もバランスが大切になります。

 ヒューマンエラーを撲滅する1つの方策として、疲れさせない作業姿勢をすることを優先して取り上げています。疲れの多くは、眼からきていると考えています。眼が疲れるからミスをしやすくなり、注意力も散漫になり災害も発生しやすくなります。

 現場観察をして、特に疲れが発生するのは、振り向き作業だと考えます。頭部の中で眼球が宙に浮いた状態なので、焦点を合わせる時に眼球を正しい位置に保つ筋肉を非常に酷使します。何度も繰り返すことで、目が疲れ焦点が合わなくなり、ミスを連発するようになるのです。頭部を何度も振るので、軽いめまいを起こすこともあります。

 部品の供給位置を180度の振り向き位置から、横に置き換えることで半分の90度になり、眼球の動きは少なくなり作業は楽になります。さらに少量ずつフロントで供給することで振り向き作業をなくし、疲労しにくい作業に変えることができます。少しの改善ですが、大きな効果となります。

図1 肉食動物と草食動物の眼の位置

図2 疲れない作業にするために振り向きや高低差をなくす