完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第40回)

アンテナの受送信はバランスよく

超音波で相手を感知し、耳で見るコウモリ

 風力発電の風車が、全国各地でどんどん建設されています。本当にそれだけ電力がいるかは疑問ですが、筆者の住んでいる田舎でも1年で13基も設置されました。大型のものは発電装置が約40トンもあり、ブレードと呼ばれる羽根も1枚が40mにもなるというとても大きな建造物です。

 風がよく吹いている時は、2から3秒で回転しています。そのブレードの先端の回転速度は、なんと新幹線並みの時速200Km以上にもなります。一見自然のエネルギーを利用してエコですと謳っていますが、実際にはそうでもないようです。なぜなら風や太陽光はいつも安定してあるわけでもないので、不足した時は結局化石燃料で調整して使わざるを得ません。見た目には良いと思われるものでも、欠点もちゃんと知ってバランスをとりながら活用すべきだと思います。

 風力発電を設置する時にドイツの動物愛護団体は、“温暖化ガスを出さないので鳥にも優しいのでもっと設置をしましょう”と奨励していました。しかし、ブレードの回転する先端の回転速度がとても速いので、飛行機で問題になっていているバードストライクの現象が、この風車でも数多く発生しました。このようなことがあり彼らは、風力発電はやっぱり反対だと叫ぶようになりました。

 鳥の視力は人間の数倍もありますが、これだけ早く回転するものは検知できないようです。また「風車は危険ですよ」という情報も鳥が持っていないことも問題ですが、彼らを教育しようもできません。実際に人間と同じ哺乳類の仲間であるコウモリも、この速度を感知できないようで、バードストライクならぬ「バットストライク」になっています。

 コウモリは、哺乳類の中でネズミに次いで約1000種類もいるそうです。コウモリの特徴は、口から超音波を発して、その反射してくる音波を耳で感じ取って、この方向でこの位置に餌があると感じとって捕食します。面白いことに、コウモリの耳をふさぐと飛ばなくなるのは、この超音波が完全に眼の役目をしているということです。コウモリの眼は、とても小さくてモノを見るにはあまり役に立っていないようです。

 コウモリの捕食の対象となるガの一種は、コウモリの発する超音波を逆感知する耳を持っており、感知したらパッと羽を閉じて急降下して逃げる凄い技をもっています。生活の知恵というより、生存していくための知恵と行動の努力が、このような能力を発揮するようになったのです。昆虫や動物が、毎日食うか食われるかという生存競争という戦場で戦っていることが見えてきます。

 

アンテナという受信する感性磨きが大切です

 私たち人間社会や企業間の競争社会も、このコウモリとガの攻め合いのように見ることができそうです。上司と部下、近所付き合い、日本と中国や韓国など近いほどに相互理解を深めて仲よくすればよいのにもかかわらず、お互いをけん制したり非難したりしています。

 これは想像するに、「欲」や「煩悩」の問題かもしれません。大晦日に除夜の鐘を百八つ聞いて煩悩を取り払おうとしていますが、年に1回まとめてではなく毎日1回1つの鐘でも聞いて清めたいものです。

 スマホから莫大な情報を簡単に受送信ができるようになり、SNSも使うことによって世界中から簡単に受発信できるようになってきました。文章ではなく、JK用語(女子高校生が使う略語)の単語並べ、文字ではなくイラストや動画も気持ちや状況を簡単に表現できます。これも便利さの半面に、弊害も見えるようになりました。

 若者がキレやすいといわれますが、頭で考えなく皮膚で反応するイメージです。ファーストフードのように食べ物も良く噛まないで食べるので、栄養過多になったり、噛む回数が少なくなり、咀嚼(そしゃく)能力も低下しているはずです。

 スマホを使いすぎるあまり、大学生でもパソコンが使えない社会現象が出てきました。文章を書くという行為は、筆記用具を用いて紙に要点を書きだしながら構成を考えて清書するものです。筆者が学生の時は、レポートはすべて万年筆で書くことが義務でしたので、書くこと自体が真剣勝負でした。ですから丁寧に書くというより、一度頭に入れて、少し熟成させて本当で良いか文や言い回しを練ってから、紙に書き下ろすイメージです。苦痛でした!そのせいか頭は真っ白になりました!

 コウモリとガの関係は、食うか食われるかの関係です。人間関係も五感で感じ取ったものをパッと反射的に相手に返すのではなく、心にいったん受け止めた方がよいでしょう。少し考えてから相手に対して一番良い返答は何かを少しでも考えることで、人間関係はずいぶんと良くなると思います。この受け止めて良い考えができるまでの少し考える時間が、思いやり、心配り、気配り、目配りといったものでしょう。

 

受信だけではなく、発信もして正しい情報を掴みましょう

 相手のことを受け止める心のアンテナは、高くそして大きくさらに感度良くしたいものです。よく言われる感性磨きは、本物に多く触れることが挙げられます。放置しておくと、サビやクモリが出て感度が鈍ります。アンテナを磨く方法は、自己規律を高めることです。

 また受信ばかりしていては、バランスが悪くなります。呼吸も息を吐いてから吸うことができるのと一緒で、送受信のバランスが大切です。本当はまず自分が発信して相手の反応を伺いながら受信アンテナを張って、相手が何を欲しているのかを的確に感じ取るようにしたいものです。

 そのために良い質問を考えておくことで、相手も話しやすくなり本音もすんなりと聞き出すことができます。それを繰り返すことで、見えなかったことが少しずつ相手から見せてもらえるようになります。相手の波長を合わせるという感性のアンテナ磨きが大切です。

図1 コウモリは超音波を使い耳で視ます

図2 アンテナはいつも磨いておきます