完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第41回)

光が反射したり屈折すると、見えないものが見えてきます

反射や屈折して見えるものは、実は錯覚や虚像です

 風呂の湯加減を確認する時に手を入れたら、指が少し上に近づいて短くなって見えます。コップに飲み物を入れて、ストローを入れたら上に折れ曲がって見えます。茶碗にコインを入れて斜めから見ると見えない角度であっても、水を入れると浮き上がって見えるようになります。

 夏の暑い時期に、遠くの方に蜃気楼(しんきろう)を見ることがたまにあります。ユラユラしながらも見えない風景が空中に漂って見える現象です。蜃気楼は、地表面の近くの温度が急に下がり、熱い空気の上に現れます。これは熱い空気中の分子間の距離は、冷たい空気中の分子間の距離が大きく、光はより速く進むことでこの現象になるのです。

 蜃気楼と虹は、何か共通点がありそうです。虹の場合は、水滴の中で太陽光が屈折してさらに反射して分解することで、七色に見えるものです。水と空気の違いはありますが、空一杯のキャンバスに自然が大きな筆で描く様は、いずれも壮大さを感じます。

 虹という字は、空をつらぬく大蛇の一種とみられたことに由来するようですが、蜃気楼の「蜃」という字は、辰年の辰(たつ)と虫でできています。蜃気楼は、空中にただよう竜を想像したと思われますが、漢字を考えるにも何かロマンを感じます。

 光の反射と屈折を上手く使えば、魔法瓶の湯がどれくらい入っているかが液面計ですぐにわかります。ストーブの灯油を注ぐ時にも、液面計を頼りにしています。ゴボゴボという音だけを頼りにして注いでいると、あふれ出してしまうことになります。

 反射や屈折は、光波や音波が水やガラスなどの物体に入る時に、その境の面で進む向きが変わることです。入射角と同じ角度で一部が同じ角度で出ていくのが反射といい、屈折は字のごとく折れ曲がることです。液面計で液量を確認する場合、光の反射を利用します。

 反射ガラスの筒の中に見える背景は、液がない時は白っぽいですが液があると反射しないので、暗い色に変わることでどこまで入ったかわかります。魔法瓶の場合は、液面計の斜めの線が太く見えるようになるのでわかります。反射や屈折したもので見える錯覚や虚像は、実際のものと違いますが原理を知ると便利な道具になります。

 ちなみにテッポウウオが水中から木の葉などにいる昆虫を水鉄砲の要領で見事に撃ち落として食べていますが、これも屈折はあるものの自分で補正しているようです。個人差もあるようです。何事も訓練次第のようで、少し嬉しくなりました。

 

糖度計は屈折の違いを数値化して、誰でも判定できる工夫がしてあります

 果実の甘味を測定する糖度計がありますが、ちょうど葉巻サイズの大きさで携帯できます。この中にあるガラス板に、試料の液を滴下させて光を当てながら糖度を測定します。果実が、甘いかどうか出荷すべきか確認している姿を、何度も見たことがあります。その時はその原理にはまったく興味はなく、舌で感じた方が早いのにと思っていました。でも客観的な数値で判定すべきことなので、どんな原理で判定しているか調べてみることにしました。

 原理は、果実(果汁)に含まれる糖の含有量によって、光の屈折率が異なる性質を利用しています。糖度が高いと屈折率が高くなり、甘いというわけです。糖度計にあるガラス板に果実を絞った試液を滴下させて測定し、屈折率をわかりやすく10、11、12と目盛りに表記された数値を糖度として読み取ります。

 地元鳥取では、二十世紀梨を代表される梨やスイカなどの特産地です。いつも初出荷の時は、この糖度計の数値がいつも発表されます。梨は、11から13。スイカは、9から13の数値です。特に甘味を感じるメロンは、13から18とさすがに高い数値になっています。ちなみに20というのが、ブドウのデアウエアです。

 個人個人の舌の感覚での表現は、どれくらい甘いのか美味しいのかは的確に表現しづらいことです。でもこのように間接的でも、数値化されて誰でも測定できると客観的であり納得もできます。

 

光の反射と屈折はからくりの原理としても活用できます

 空気の屈折率は、1.00という数値なので屈折しないのです。水は、1.33。ガラスは、1.46。ダイヤモンドの数値は2.42ですが、屈折率が非常に高いので、光の通過スピードが遅くなりキラキラと輝くのです。少しの通過スピードが違うだけでも、光の輝きはまったく違うのです。この屈折の世界では、モタモタしていた方がキラキラするとは面白い現象ですが、高価なので手は出せません。

 レンズは、この光の屈折を利用してまっすぐ進むことを曲げることで、像を大きくしたり小さくしたりしています。近視の凹レンズは像を小さくし、遠視の凸レンズや虫眼鏡は大きくする屈折させています。これらは正確に光を反射させる必要があり、表面で反射しなければなりません。これを表面鏡といいますが、筆者の眼鏡のレンズはほぼ3年でコーティングが取れ始めるので、交換の目安にしています。

 鏡は反射を利用していますが、裏に金属の被膜が塗ってあり、裏面鏡ともいわれます。工場内にある大きな中華鍋の鏡は、凸レンズの特徴である広い範囲を映す機能を使っています。逆に顔を大きく映し出して、化粧をしたりする凹面鏡は凹レンズの原理を利用しています。

 自動車のバックミラーや交差点にあるカーブミラーは、この原理を使っています。ヘッドライトや懐中電灯の中にあるリフレクターと呼ばれる反射板は、光を集めて明るくする機能をもっています。この原理を音波で利用しているのが、パラボラアンテナです。光も音も波ということは、原理は一緒なので応用が利きます。反射や屈折を使うからくりの応用は、工場内でも活用できます。現地現物で探検してみましょう。

図1 液面鏡の液量判定は、光が反射するかしないかです

図2 凹レンズの眼鏡も屈折を利用しています