完全版「虫の眼・魚の眼・鳥の眼」(第43回)

パッと見ただけで確認ができる

卵の透明パックだと、数えなくても数がわかります

 卵をスーパーマーケットやコンビニで買う時には、卵が割れないように透明なプラスチック(A-PET:アモルファス・ポリエチレンテレフタレートが主流)容器に4個、6個、10個と収納されています。温玉は1個売りが多いですが、やはり透明なパックに入っています。パッと見ただけでも、何個入っているかがわかり欠品もすぐにわかります。

 しかも決まった数量になっているので、検数する必要もありません。ただ古紙を使ったパルプモールドの容器は、パッと中身がわかるものではありません。中が見えないので小さな穴を開けるなどの工夫で、数を確認することができます。でも中身の状態を知るには、フタを開けてさらにひっくり返さないとすべてはわかりません。

 その他にも刺身や魚なども透明なフィルムで覆うことで、ホコリや汚れを防ぎなからも中身を確認することができます。いずれにしても中身が直接見えることで、安心して買うことができます。

 バラ売りでは、あとで重量を測って値段をつけるという作業が発生してレジが混雑してしまいます。そのためにパックにして、値段もラベル表示されています。今も店員とフェイス・トゥ・フェイスで1個1個現物確認しながら、話を交えて買う市場もあります。手間がかかることは確かですが、安心という点では後者に軍配は上がると思います。

 さてスーパーマーケットやコンビニで、他の商品はすべて値段の表示があるのに、たった1つの商品に値段が印字されていなかったら、「これは何かあったかな?」と思い買う気にはなれません。これが2つもあれば、すぐにその店から出て他の店に行くでしょう。ましてや中身が欠品していたり壊れていたりすると、買わないばかりか写真を撮れてSNSで情報公開までされてクレームにもなりかねません。

 またラベルをはがした容器の水に、0円と表示されていてもだれも買いません。中身の内容を表示したラベルを信じて、その商品を私たちは買っています。中身が見えることは大切ですし、表示と中身を一致させておく製造責任はとても重要です。お客様はそれを信じて買っているのですから。

 

キット化とセット化で、数えたり確認したりする手間をなくせます

 キット化は、プラモデルの部品のように組立する材料が一式揃った状態にしておくことです。具体的な事例としては、大工道具一式、工具箱が揃った工具一式、プラスやマイナスのドライバーの各種サイズが揃ったドライバーキット、ドリル刃が各径の順番に収納したドリル刃キットなどがあります。ほとんど場合、その商品の姿の型をそのまま凹ましてスポッと入れたり、ちょうど当てはまる穴に入れればよいなど元の位置に戻しやすい工夫が施されています。いずれもケースを見ただけでも中身がわかるもの、また箱やフタを開けた時に全部揃っていることがわかる仕組みなっているものです。

 セットの意味は、置く、固定させる、くっつくなどの意味があります。セット化は、出来上がりの一式のことです。具体例として、ナイフ、フォーク、スプーンなどが一式揃ったカトラリーセット、テーブル、ソファー、テーブルクロスなどの揃った応接セット、テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの新家庭家電セット、コーヒーや紅茶のセットなどがあります。

 このような市販品での事例は探してみるとたくさんありますが、皆さんの職場では一体どれくらいあるでしょうか?普段そういう視点で、事例を探したことはないものです。休憩や交代の時間を利用して、何件あるか、そしてもっと使いやすい方法はないかを点検してみましょう。仲間を誘って、自部門だけでなく他部門にも足を運ぶだけでも事例発見ができます。つまり普段は意識して考え方ことがないだけであり、目的意識をもって観察していけば、自分たちの職場でも多くの事例を発見できます。

 キット化やセット化をすることで、数を数えたり確認したりするムダをなくしミスを防ぐことができます。特に数を数えることは、簡単なようで実はミスのおこしやすい作業なのです。キット化やセット化を、現場のピッキング作業や組立作業などに応用してみましょう。

 

パッと見てわかることで確実にミスをなくせます

 さて皆様に届くダイレクトメール(DM)を、どれくらいの時間で要不要を判断し、次の処理をしていますか?測ったことがないのでわからないといわずに、およその時間をイメージして下さい。その時間は、およそ3秒です。どこから来たのか、どの内容か判断し、不要なら次の作業であるゴミ箱に投げています。パッと見てわかるというのは、このわずか3秒で判断し、次の作業の処置ができる感覚で考えてみましょう。

 スーパーマーケットなどの店舗や商品の展示の仕方は、ピッキング作業や組立作業さらには段取り替え作業などにも応用できます。キット化やセット化も、パッと見たら一式揃っており、欠品なし!異常なし!と判断し、すぐ次の作業準備に取り掛かれます。

 これらが素早くできると、余裕ができます。余裕ができると作業確認、仕上がり確認の時間を作ることができます。この余裕があるおかげで、ミスをその時点で発見しやすく修正もできるので、ポカミスをなくせます。多くの場合、この確認したり検査をしたりする時間がなく、あとで手抜きをしたことがわかりますが“後の祭り”です。

 「段取り八部に仕事二部」をいつも心掛けましょうと、いつも現場で伝えています。つまり事前準備が確実にできていれば、次の付加価値を生む仕事が正しく、しかも不具合なしで簡単にできます。そのためにも、パッと見たらすぐわかる仕組みをもっと取り込みたいものです。

図1 全部品の組立順番をつけたキット化

図2 パッと見てわかるとは3秒以内です