4.お互いをつないで考えてみよう

情報のキャッチボールが多すぎませんか?

 

 

 

  お客様から注文を営業が受けて、型番、品名、仕様、数量、納期、納入場所などの情報を加工して、次工程の生産部門に受け渡しをしていきます。生産部門は、営業から受け取った情報をさらに加工して、完成品や仕掛り、さらに部品の在庫状況や在庫のない部品の納期を確認しながら、納期回答をして生産計画に投入し、生産指示を出していきます。このようにたった一本の電話やFAX、あるいはメールなどの注文書は、非常に多くの情報と複雑な流れを作り、なおかつこれらの情報を基に素材や原料が加工され、組立して、検査、さらに梱包して、納品書や請求書までもが作成されてきます。これが、私たち人間の体のように上手く組織されていると、ダントツの素晴らしい会社になれるわけですが、なかなかどうして現状のやり取りはゴチャゴチャしたおもちゃ箱のようで上手く行かないものですね。

 

 このような複雑で混沌とした状態において、お客様からの要求に変更があると、お客様と営業さらに生産部門との情報のキャッチボールが始まります。何度かのやり取りがあって何とか生産着手に漕ぎ着けますが、後に残るのは部門間の気まずい雰囲気であり、これでよい製品やサービスは出来るものではありません。このような情報のキャッチボールのやり取りは、ひたすら製品の原価を上げていることに、なかなか気がつくものではありません。直接、お金が動いているのが見えませんので仕方ありませんね。

 

 これらのことの繰り返しが多くなりますと、生産部門は予定外の生産順番の変更に伴う段取り替えや人員配置の変更、仕掛品の移動などで混乱してしまい、結局生産に着手できないで飛び交う情報に振り回されることになります。これらのやり取りも、全て原価を上げる要因になります。生産部門のあるべき姿は、計画変動に追従するフレキシブル性が求められますが、余りにも急な変更は現場にとっては非常に辛いものです。これらの情報のムダなやり取りが削減できれば、大きな原価削減になるばかりか、お客様との対応が迅速になり、会社の評判も良くなっていきます。

 

 

 

まだ部門間の相互の理解不足が多い

 

 この原因は、なんでしょうか?考えて見ますと色々とでてきますが、今回取り上げたいものとしては、部門間の連携とコミュニケーションの問題です。その営業と製造の関係を考えて見ますと、それぞれの仕事の役割分担が決まっており、売るのが営業で、つくるのが製造だとなっています。そうなりますと売上は営業の責任で、費用やコストは製造の責任という分業も進んできます。ですから、それぞれの部門で利益を上げるための活動は、営業は売上を伸ばすことばかり行い、製造はコストダウンに一生懸命になり、会社全体としてではなく部門だけのことを考えて、お互いの自分の城は自分で守ろうとして、部門間の連携は少なくなって、お互いが会社内で乖離し始めてきます。

 

 

 無理な注文を取ってきた営業が悪いだの、納期遅れは製造の怠慢だなどと、悪いのは他部門の責任だと責任の擦り付けをしてしまい、お互いの立場の理解をしようとしなくなり、お互いを貶し合う場面につながってきます。こんな状態を喜ぶのは一体誰でしょうか?それは皆さんの競争会社であり、彼らは手を叩いて喜んでいると思います。本当は売上を伸ばし、原価を低減し、それらの活動によって利益を出すには、しっかりとした「生産システム」ができているからこそ、これらの成果が出るのであって、営業だけとか製造だけとかが会社に貢献しているわけではないのです。システムとは、それぞれの部門間の連携が強固な関係にあり、一つの部門に何かあるとすぐに他の部門が的確に反応する関係を持って、相乗効果を発揮することです。生産活動は、各部門がコミュニケーションをしっかりとりながら、一つひとつを確実につないでいくことで初めてできるものです。いわば生産活動は、何度もバトンタッチを必要とするリレー競争のようなものです。

   

 

 

お互いを良く理解して、つないで考える

 

 

  例えば営業が、お客様との商談のやり取りにおいて、注文の取り方、納期を調整したりして、お客様から頂いた受注を平準化して生産計画に落とし込み、計画のバラツキをなくすと製造が残業や休日出勤しなくてもよくなり、しかも生産しやすい配慮をすることになったら製造の皆さんはどう思われますか?本当でその注文の取り方でよいか、いつまでも大ロットではなく、本当に必要な数量はもっと少なくてよいのではないか?本当でその納期でよいか?短納期ならお客様は在庫を抱えなくても済まないか?必要な物を必要な時に必要な数だけ、納品できれば工場の生産計画は、変動の少ないものにならないか?と考えてみてください。単に注文をお客様から頂くのではなく、後工程のことまで考えて、どういう注文の取り方に替えていけばもっと流れが良くなるかを、部門間でつないで考えてみることです。

 

 生産部門は大ロットから小ロットになると、納期対応がよくなり、さらには営業のレスポンスがよくなり、結果的に売上の増加に結びついてきます。このように受注の変動の波を平準化して、バラツキを少なくした生産計画を立てることができますと、生産がスムーズにつくれるようになりますから、前工程の部品も変動が少なく安定してきますので、協力工場や仕入先から物を安く買えることまで結びついてきます。注文の取り方や生産計画が良ければ、こんな前工程まで上手くつながってきます。最初の段階でちょっと工夫をすれば、結局注文を受けた営業部門の仕事がやりやすくなるのです。後工程を良くしようと誠心誠意頑張ったところには、回りまわってその部門やその人にご褒美が返ってくるものなのです。

 

 生産部門でやるべきことは、受注があったものをすぐにつくれる体制にしておかなければなりません。営業がお客様から頂いた受注を確実に出荷して、売上に寄与しなければなりません。営業が苦労して受注してきたものが、性能が出ないとか品質がよくないなど生産要因ですぐに出荷できなければ、ビジネスチャンスを逃してしまうからです。つまり、営業やさらには開発の仕事をやりやすくすることが、生産部門の改善になります。そのためにも、多品種小量生産ができるようにして、すぐに売れるようにしておくことが重要になります。工場を訪問されるお客様が、「なるほどこのようにものづくりをしているなら、安心して発注できるなあ♪」と言われるように、工場をショールームのように整備しておくことも重要な取り組みです。部門は違ってもお客様に対して向かう方向と姿勢は、同じ会社の仲間としてベクトルをいつも合わせておくべきだと思います。