5.現場が変わらないのはなぜ?

改善活動はしているが、成果は上がらないのは?

 

 

 

  現場だけでなく工場全体に改善提案制度を導入したり、個別改善を実施したりするけれども、狙ったほどの成果が出てこないというような悩みを抱えている企業の話を伺います。取組みが悪いのか、やり方がまずいのか、動機付けの問題なのか、目先のことで手一杯になり表面的なことしか着手できないのかなどなど、その原因は何かと考えてリストアップしてみても、なかなか本当のところが見えてこないようです。これはやはり難しい問題であり、実は見えない部分に原因があるからだと思います。

 

 これは、システムの違いだと考えられます。個々の改善をやっても、それが前後工程に良い影響を与えなければその部分だけの「能率」が向上するだけであって、工程間やライン全体としての「効率」が向上したかどうかまでをつなぎ、目で見える成果になったかどうかまでやらないとわからないものです。ここでシステムとは、個々の要素を関連付けさせるものであり、3つの要素があったときにそれぞれのつなぎが上手くいき、1+1+1=3以上になることです。3つの要素を関連付けさせても、3未満であればつなぎ方が悪く、成果のないやり方だったということです。言い方を替えますと、単に3つをつなげただけではなく、それぞれが有機的に絡み合って相乗効果を引き寄せて、今まで以上の良い成果を出すことです。つまり、成果が上がらなかった改善活動は、『点』に留まってしまっていたものであり、点と点を結ぶような『線』の改善やさらに縦糸や横糸が織り成す『面』の改善につながっていなかったことだと考えられます。

 

 そのシステムの違いを、もう少し考えてみましょう。上手く行かないシステムは、恐らく押し込み方式のシステムで、上(会社、上司)から強制的?に命令される改善制度であり、目標を掲げて「月に一人当たり改善提案を何件出しなさい!」というようなもので、ほとんどの会社で見られる光景です。これで本当に現場の人たちは、意欲的に提案を出したり、自ら改善をやったりするのでしょうか?現場の人たちは、イヤイヤやらされている感じであり、成果を継続して出し続けることは難しいですね。そうではなく、自らが意欲を持って人が中心となって、自主的に活動するシステムをつくり上げることです。命令されて動くような“中央統制システム”ではなく、顧客や市場環境さらに会社内の変化に素早くフレキシブルに対応して、自ら考えてより良い方向に進んでいく“生物的なシステム”がイメージされます。

 

 

 

マネージャーが変われば、成果は出てくる

 

 

 

 このような現場を変えていくのは、トップと従業員の中間に存在するマネージャーの役目(接点やリンクや関節に相当)が大切で、マネージャーたちが本当で変わろうとすると現場はすぐに変わることができるはず。それは単なるテクニックでは到底できるものではなく、現場で働いている人たちが自主的に活動することで、確固とした改善の成果を得ることができると考えます。それには、現場の人たちに自らやろうとする意欲を持たせることであり、それを仕向けることができるのは、彼らを部下としているマネージャーの人たちです。マネージャーが現状維持でよいと思っていたら、部下もそれに染まってしまい改善は一向に進みません。それは部下の業績考課や仕事の決定権などをマネージャーが握っているからです。また、マネージャーはある程度の権限と責任を持っているので、その責任範囲での自由な活動が出来るわけです。

 

 つまりマネージャーは機能別に分かれた分業によって、その分業の範囲で身動きが本当は取れるわけですが、実際には自分の今日の業務に没頭してしまい、明日の仕事である改善に着手できなくなっています。これは誰が悪いというわけではありませんが、誰がそれを問題として解決することを考えなければならないかといえば、それはマネージャーの人たちです。マネージャーの皆さんが、最初に自ら行動を起こさなければなりません。この人たちは、上にも下にも動けるある程度の自由度を持っている人たちのはずです。変革を起こすのは、このミドルマネジメントの人たちです。(本心は、経営者のトップ自ら行動を起こしてもらいたいのですよ!)

 

 現在の変動する世の中にあるいは競争の激しい経営環境の中では、このままでは衰退していくばかりです。そして、売上はどんどん減少して衰退しています。それはなぜかというと、変化対応力がなくなってくるからです。それで現場とマネージャーの間で溝ができたり、場合によっては対立まで生じることもあります。このように分裂してしまうと、自主的な活動が停止してしまうことになりかねません。部下は、上司の顔を見ながら普段は仕事をしているものです。しかも部下は、上司を選ぶことが出来ないのです。この立場をもう一度わきまえて自己反省してもらい、上司自ら何故改善を行うのかをきちんと伝わるように一人ひとりに説得していくことが必要です。理解させるのではなく、十分に納得してもらうことです。手間を掛けないと、良い物が出来ないのと一緒です。

   

 

 

教育を積極的に行い、人を鍛える

 

 

  会社の最も重要な財産といえば、当然人です。人を単なる労働力という旧態依然の考えではなく、人は計り知れない能力を無限に持っているものだということを再認識すべきでしょう。従業員の皆さんの能力はあるはずですが、結果としてその能力が十分に発揮されないことが多くあります。その多くが、教育に対する投資を上司が惜しんでいるのではないかと考えます。教育は見えるものではありませんし、即効性がないので、目先のことを追っているとますます見えなくなるものです。将来を見据えて会社が生き残っていくためにも、もっと時間とお金を掛けて、積極的に人財(財産の財)教育をしていく必要があります。教育して何度も訓練して、鍛え上げるのです。

 

 人の能力を遺憾なく発揮して向上させることで、自然に結果が出てきます。やった本人は、やれば出来るという自信が湧いてきます。その自信が自主性をさらに推し進めて、絶えず改善を繰り返すようになり大きな成果に結びついていきます。人は一気には育たないものであり、毎日コツコツと愚直に努力を積み重ねていくような活動になりますが、素早い変化対応力もこのような地道な訓練の積み重ねで培われるものでしょう。その結果として、日々改善が継続していく現場が構築されるでしょう。