7.会社の文化を変える

職場の良し悪しは、その会社の文化そのもの

 

 

 

  人に初めて逢った時には、第一印象でその人の印象を9割も決めてしまうものだといわれています。身だしなみをいつも小奇麗にして、挨拶はこちらから大きな声で発します。しかも笑顔をつくりながら、握手もしっかりと両手で行うことを、いつも気をつけています。発する言葉に込められた内容は、印象の内のたった7%しか相手は気にしていないことは、驚きの数値でした。それよりも見た目の服装や顔の表情、声の明るさ、声の調子などのウエイトが高いというのです。著者自身も実際に会社を訪問して、玄関や工場内に一歩踏み入れた時に、一目見た瞬間にその会社の良し悪しを決めてしまっています。またいつもすべての結果は床にあると思って、床の状態を見ておよその工場の5Sや規律のレベルを想定しています。8から9割は間違いない判断を出すことができますが、床や5Sの結果は、会社の文化そのものが表面化したものと考えています。

 

 文化という字を見てみますと、「文」は大地の上に人が立っていて、その地面の下には交差しています。つまり地面の下の土を、耕すことだと思います。「化」は、化けるということです。つまり見えない部分を常に耕すことによって、その上にいる人が変化することを、「文化」と屁理屈な見方で考えてみましたがどうでしょうか?

 

 とても美味しくて、しかも収穫してから2年間も腐らないリンゴを、何年もかかって作り上げたという話をお聞きなったと思います。本当の実を得るなら、見えない部分の土から作り変えないといけないことを示唆したものです。会社の目的は、長く生き残ることです。そのためには見える部分を良くするだけではなく、合わせて見えない部分である文化や風土を変えていく必要があると考えます。

 

 

 

規律を律するのは、上司自らが率先垂範して

 

 

 ある機械加工と組立を行っている工場に見学に行った時、フォークリフトや台車が行き来している構内の通路や道路を見ても、汚れがなくゴミも見当たりませんでした。見学コースから少し離れて、一般の社員に「綺麗な職場ですが、いつも掃除をしておられるのか?掃除時間はどれくらいしているのか?」と訊ねてみました。すると意外な答えが返ってきました。掃除時間は特に決めていないといい、汚れた時に気のついた人が率先して清掃しているというのです。

 

 「それだけじゃないでしょう?何かあるはずですが、本当のところは何ですか?」としつこく問い質したところ、頭を掻きながら「実は、社長が5Sに対してとても煩いのです。またいつも突然現れて、あれこれと指摘をされるのです。だからいつもみんなが、綺麗にしておくのが習慣になってしまったのです。」と告白?されました。それはトップがいつも現場に出て、自分のあるべき姿や想いを社員に自分の言葉で熱く伝えているのでしょう。さりげなく些細なことですが、実は全てのことを含んでいるかのようであり、このことを「細部に神々は宿る」というようです。

 

 職場に新たに白線を引いて物の置き場に設定しても、いつもその白線から物がはみ出ているとしたら、それを見ている社員はそれが当たり前になってしまいます。はみ出しても問題はないのだ、そうするなら他の約束事も守らなくても問題はないのだというように、それらが次第にその職場の風土になっていきます。それを誰も指摘しなければ、白線からはみ出してもよいのだというように、士気が成り下がり規律も低下してしまいます。そこで上司やトップが少しでもはみ出したら、すぐに元に戻す行動と規律が求められます。場合によっては、部下に雷を落とすこともあるかと思います。決して怒るのではなく、叱るということです。このようにすぐに指摘して、あるべき姿をいつも維持できるように規律を自ら律することで、その職場の風土を規律あるものに変えていくべきだと思います。風土が変われば、会社の文化も変わっていくものです。

 

 人間は刺激がなければ、マイナス思考に陥りやすい動物なのです。プラス思考にしていくには、プラス思考の言葉や態度をシャワーのように社員に振りかけ続ける誰かが必要なわけです。その役割は、上司やトップの重要な仕事になるかと思います。その職場は、その長の『鏡』であり、『鑑』になるものだと思います。その職場の長の考えや行動が、その職場の規律をつくっていくものです。

   

 

 

部下を育てるということは自分を磨くこと

 

 

  人を育てることは、責任を持ってその人の行動がはっきり変わることまで見届けなければなりません。人は尊敬する人や好きな人のことは、自分でも真似てみようかと思うそうです。逆にそんな心理を、逆手にとってしまえばよいのです。あなた自身が、部下から好かれる人に変わればよいのです。反省だけはサルでも出来ますが、その後の行動を変えることのできるのは人間になりたいと思う人間だけです。今までの行動(こうどう;攻動、口動、考動、孝動、交動、幸動など)を振り返り、何をすべきか自ら考え直す良い機会になるはずです。多くの人が自分中心になり、部下はニの次になっていたと思います。もっと自己規律を向上させて、ご自分の職場も向上させたいものです。

 

 ご自分の仕事を楽にしたいのなら、自らが持っているノウハウ、知識、知恵を惜しみなく部下に提供して、第二のご自分の分身となるべき人を育て上げると良いでしょう。一度に多くの人は無理でしょうから、部下の中で後継者と思われる人を選定し、厳しくしかも優しく育てていくと良いでしょう。後継者として申し分のない人に部下を育成できて、初めて上司の仕事になると思います。教えることで改めて学ぶことが出来ます。

 

 部下を褒めることが出来ない上司を多く見ることがあります。何故部下を認めようとしないのでしょうか?自分より仕事が出来ないのは当たり前のことですが、少し振り返ってご自分が仕事に従事したことを思い出して見て欲しいものです。誰も最初から仕事が出来た訳ではありません。部下は上司を選べません。そう思うと彼らの仕事や人生も決めるのは、上司であるあなた自身だということを自覚してもらいたいのです。まず相手である部下の良い点を見つけ、そして認めてあげることです。部下は給料の価値よりも、上司から認めてもらうことを給料よりも価値があると思っているのです。そんな時間がない!とおっしゃるのは言い訳ですよ。時間はつくリ出すものです。